人間とはひとつでやっと不完全になれる

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まっぷたつの子爵

『まっぷたつの子爵』

著者
Calvino, Italo [著]/河島 英昭 [訳]/カルヴィーノ [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784003270967
価格
562円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

人間とはひとつでやっと不完全になれる

[レビュアー] 図書新聞

 時は18世紀初頭、トルコ軍との戦争で体が左右まっぷたつに吹き飛ばされたメダルド子爵。右半身は〈悪〉、左半身は〈善〉となり、子爵は故郷を大混乱に陥れる……。イタリアの国民作家・カルヴィーノが描く現代の寓話は、ネオレアリズモ文学として出発した作家自身の新たな転換となっただけでなく、世界文学としての幻想文学にとっても重要な作品となった。半身になっても生き続ける子爵の描写はメルヘンのはずなのにどこかリアル、登場人物の造形や物語の展開も昔話風の語りの中に現代性を見出せる。人間が持つ二面性をカルヴィーノは物語によって明らかにしているが、善である左半身も悪の右半身と「同じぐらいに非人間的な美徳」だ。人間とはひとつでやっと不完全になれるのである。(河島英昭訳、5・16刊、一七六頁・本体五二〇円・岩波文庫)

図書新聞
2017年7月15日号(3311号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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