「読み終わるのが惜しくて、ちびちび読みました」――ビジネス書の目利きが選んだ目からウロコの力作!

レビュー

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世界史を創ったビジネスモデル

『世界史を創ったビジネスモデル』

著者
野口 悠紀雄 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784106038044
発売日
2017/05/26
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『世界史を創ったビジネスモデル』野口悠紀雄・著

[レビュアー] 土井英司(ビジネスブックマラソン編集長)

「一気に読みました」というのは、本にとって最高の賛辞の一つですが、「読み終わるのが惜しくて、ちびちび読みました」もまた、最高の褒め言葉ではないでしょうか。

本日ご紹介する、野口悠紀雄教授の『世界史を創ったビジネスモデル』は、最近読んだ中では最も「読み終わるのが惜しくて、ちびちび読んだ」一冊。

ローマ帝国からヨーロッパ海洋国家のビジネスモデル、さらには最近のIT企業のビジネスモデルまで、広く「ビジネスモデル」を論じており、目からウロコの内容でした。

経済学者のフィルターを通して世界史を見ると、一体どう見えるのか。これは、塩野七生さんの一連の著書に匹敵するほど読み応えがありました。

「多様性の確保」と「フロンティアの拡大」が、なぜ国や企業にとって重要なのか。誰でも受けいれる合理的な寛容さとフロンティア拡大で成功し続けたローマ帝国の事例に、指導者は学ぶべきでしょう。

そして圧巻は、数百年先を見通し、平和時代のビジネスモデル(=通商)を開発し、後の海洋国家のモデルの基礎を創った「国造りの天才」アウグストゥス。

本書を読んで、彼がなぜ歴史上最高のリーダーとして尊敬されるのか、その本質がわかった気がしました。

ビジネスモデルとは何なのか、それが機能するには何が必要なのか、著者の慧眼も、本書の読みどころです。

さっそく、しびれる内容をチェックして行きましょう。

 ***

「ビジネスモデル」という概念は、企業だけでなく、国にも当てはまる。国がどのような活動を行なうかは、ビジネスモデルの選択と考えることができるのだ

重要な概念は、「多様性の確保」と「フロンティアの拡大」である。多様性を実現できた国や企業は、できなかった国や企業に対して優位になることが多い

ローマを支える柱は、軍と奴隷である。軍を養うには税収が必要だし、退役後の兵士に与える土地を獲得するには領土を拡張する必要がある。これらは周辺地に侵略し、征服することで得られる。そして、戦争は奴隷の最大の供給源だ。つまり、戦争はローマにとっての中核的「ビジネス」なのである

公共施設といえば国や地方公共団体の予算で建設するものだと我々は思っているが、ローマでは、実力者が私費を投じて作ったのだ

ローマとアメリカの類似点は、以上にとどまらない。もっとも重要な共通点は、戦争後の対外政策にある。それは、よく言えば「寛容主義」であり、やや否定的なニュアンスを含めて言えば、「敗者同化主義」だ

人間が自ら進んで働くには、第1に未来への希望が必要だ。そして第2に、勤勉に働いたことが正しく評価される仕組みが必要だ

アウグストゥスは、それまでの空間的なフロンティアの拡大が限界に来たことを知り、それに代わる新しいフロンティアを、通商の拡大に求めようとした

時代精神を体現したビジネスモデルが生まれるのは稀だ。現代で言えば、その稀な例が、iPhoneの登場だ。これが画期的であったのは、もちろん、それが優れた装置であり、便利だからである。ただし、それだけでなく、時代の精神を体現しているからだ

優れたビジネスモデルは、単に金を儲けるだけのものではない。また、余剰労働力を活用するだけのものでもない。そこには、人々を燃え上がらせるものが含まれているのだ

広い領土は持たず、国を全世界に向って開放する。そして、貿易を中心的な産業とし、少数精鋭で大きな収益を実現する。これは、広い領土と多数の国民を持ち、主要産業は農業である大陸型国家とは異質のものだ。海洋国家は、ヴェネツィアやポルトガルが意識して採用した、国としてのビジネスモデルなのである

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近年稀に見る日本人著者による力作であり、かつ今後の日本の方向性への示唆に富む内容でした。

首相を含め、政治家は必読。

企業経営者も、起業家も、読めば歴史上の偉人たちが創り上げた「ビジネスモデル」のすごさにしびれ、テンションが上がる内容です。

ぜひ読んでみてください。

2017年6月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
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