『大不平等 エレファントカーブが予測する未来』 ブランコ・ミラノヴィッチ著

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大不平等

『大不平等』

著者
ブランコ・ミラノヴィッチ [著]/立木勝 [訳]
出版社
みすず書房
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784622086130
発売日
2017/06/10
価格
3,456円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『大不平等 エレファントカーブが予測する未来』 ブランコ・ミラノヴィッチ著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

国際的視野で見る所得

 経済問題、特に格差など所得分配上の問題については、通常、一国内で議論を捉えがちだ。日本国内で、所得格差が開いているかどうか、不平等が生じているかどうかを多くの人が気にする。しかし、これだけグローバル化した社会においては、もっと国際的な視点で、格差や平等の問題を捉えないと本質や未来像が見えてこないのではないか。

 そこで、世界全体を所得階層別に並べて、実質所得の変化をグラフ化してみると、驚くべき事実が浮かび上がる。非常に大きな伸びを示したのが、グローバルな超富裕層と世界全体でみたときに真ん中位の位置にある所得層、例えば中国など新興国の中間所得層だ。それに対して極端に伸びが低くなったのが、先進国の中間所得層にあたる人達(たち)だった。

 このグラフが鼻を持ち上げた象に似ていることから、エレファントカーブと呼ばれるようになり、この事実を見つけ出した著者は一躍、注目のエコノミストとなった。

 この事実から先進国国内の所得格差が今後さらに広がっていく可能性をみる人もいるかもしれない。あるいは、新興国の中高所得層と、先進国の中低所得層との所得の逆転の可能性を読み取る人もいるかもしれない。

 もちろん、この事実の指摘だけが本書の目的ではなく、それはあくまでスタートに過ぎない。格差や不平等がどこから生まれるのか、それを抑制したり拡大させたりするメカニズムは何かを、単にグローバルの視点だけではなく、各国内の経済構造についても踏み込んで考え、詳細な検討がなされている。

 そこで重要視されているのは、かなり長期の視点だ。視野を広くとり、より長い期間、より広い範囲で物事を捉えなおすことで、今まで見えなかった経済の大きなうねりが見えてくる。そんなことを強く感じさせてくれる本だ。立木勝訳。

 ◇Branko Milanovic=ルクセンブルク所得研究センター上級研究員。著書に『不平等について』など。

 みすず書房 3200円

読売新聞
2017年7月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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