『二大政党制の崩壊と政権担当能力評価』 山田真裕著

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二大政党制の崩壊と政権担当能力評価

『二大政党制の崩壊と政権担当能力評価』

著者
山田 真裕 [著]
出版社
木鐸社
ISBN
9784833225038
価格
3,780円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『二大政党制の崩壊と政権担当能力評価』 山田真裕著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

揺れる有権者の実像

 2009年の民主党政権の誕生によって、日本でも二大政党制が実現したかに見えた。しかし、民主党はわずか3年で下野し、民進党となった今も党勢回復の兆しを見せていない。なぜ二大政党制は定着しなかったのだろうか。著者はこう問いかけ、大量のデータに基づいて、この間有権者が二大政党の政権担当能力をどのように評価してきたかを分析している。

 2009年の民主党への政権交代は、「スゥイング」すなわち有権者の多くが投票先を自民党から民主党に変えることによって起きた。その背景には、民主党の政権担当能力への評価の高まりがあった。本書の分析によれば、彼らスゥイング・ヴォーターたちは、他の有権者に比べて政治知識が特別豊かではなく、むしろやや劣る位であったが、政策を重視して投票先を決定する人が多かったという。また、彼らが情報を得ていたテレビ番組と投票行動の間に、一定の相関関係があった可能性が指摘されている。

 他方で、2012年の自民党への政権交代は、民主党の政権担当能力への評価の悪化を背景としていた。当時の調査では、政権担当能力がある政党が「ない」とする回答者が3割近くもおり、民主党政権の瓦解が政治不信の深化を伴っていたことが分かる。その後、自民党政権は安定した政権運営を続け、高い支持率を誇ってきたものの、著者の「感情温度計」(好感度を探るための調査手法)を用いた分析によると、安倍自民党に対する有権者の好悪の感情ははっきり分かれる傾向にあるという。このことは、高い支持率の陰で、安倍政権に対して批判的な有権者も一定数存在してきたことを示している。

 一党優位政党制が復活し、政権交代の受け皿が見あたらないとも言われる。しかし、有権者の約6割は「常時無党派層」であり、国政選挙で再び大きなスゥイングが起こる可能性は高い。政権担当能力があると評価される野党は、再び台頭するのだろうか。今後を注視していきたい。

 ◇やまだ・まさひろ=1965年北海道生まれ。関西学院大教授。著書に『政治参加と民主政治』など。

 木鐸社 3500円

読売新聞
2017年7月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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