乙一×近藤史恵×永嶋恵美・座談会――「恋愛」はダメで、「迷惑」がいい私たち〈『迷―まよう―』『惑―まどう―』刊行記念〉

対談・鼎談

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迷

『迷』

著者
アミの会(仮) [著]/大沢 在昌 [著]/乙一 [著]/近藤 史恵 [著]/篠田 真由美 [著]/柴田 よしき [著]/新津 きよみ [著]/福田 和代 [著]/松村 比呂美 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103511113
発売日
2017/07/31
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

惑

『惑』

著者
アミの会(仮) [著]/大崎 梢 [著]/加納 朋子 [著]/今野 敏 [著]/永嶋 恵美 [著]/法月 綸太郎 [著]/松尾 由美 [著]/光原 百合 [著]/矢崎 存美 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103511120
発売日
2017/07/31
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「恋愛」はダメで、「迷惑」がいい私たち


左から乙一さん、近藤史恵さん、永嶋恵美さん

全貌を把握できない作家集団

永嶋 「アミの会(仮)」という名称を初めて耳にする方もいると思いますので、まずは、私と近藤さんが参加しているこの女性作家集団の紹介をさせてください。

近藤 そもそもは、数人の女性作家で食事をしていた時に、「せっかくだから、アンソロジーを出版しよう」という話になって、出版不況ですし、自分たちから積極的に動いてみようと。女性縛りで、他の作家にも声をかけて、メンバーを集めました。普段はお酒を飲んだり、お食事をしたり。長く続けられるように、参加も強制ではない、ゆるい会です。一応女子会ですが、むしろ、海賊の宴みたいな。

永嶋 魔女かもしれませんね。誰も全貌を把握していませんし。

乙一 海賊、魔女……。最初は何人くらいでスタートしたんですか?

近藤 5人で集まって、アンソロジーを出版するときには、9人になって。

乙一 名前の由来は?

近藤 「雨の会」という作家集団が以前あったのですが、この会へのリスペクトがまずあります。メンバーの新津きよみさんはこちらにも参加していて、アンソロジーの話が出たときに、「雨の会」みたいにしたいねという話になり、ならば、フランス語で友だちという意味を持つ「アミ」を使って「アミの会」がいいかなと。

永嶋 物語を編むという意味もね。

近藤 美しい名前をつけようという案もありましたが、綺麗過ぎて、女性集団っぽいのはちょっとイヤで。

永嶋 バンカラな集まりですから。

近藤 決定する前に冗談で(仮)とつけたのですが、ちょっと抜けている感じもいいので、そのまま今に至ります。

容赦なく不幸……

乙一 今回、僕は『迷-まよう-』に参加させていただきましたが、同時に『惑-まどう-』も刊行されます。2冊同時刊行された理由は?

近藤 1冊では納まりきれないほど、今回参加メンバーが多くなってしまったんです。これまでの3冊と差別化するためにも、2冊にして、同頁、同時刊行にしたかったのですが、それなりのボリュームは欲しかったので、ゲストの皆さんにご執筆をお願いしました。

永嶋 毎回一つ、新しいことをしたくて。

近藤 2冊目の時も感じましたが、ゲストの方が入ることによって、雰囲気が変わるので、それも変化になりますよね。

乙一 女子校から共学へみたいな?

永嶋 男子クラスが突然できたみたいな? それって、居心地悪いですよね。乙一さん、どうでしたか?

乙一 肩身、狭かったです……。

近藤・永嶋 やっぱり(爆笑)。

乙一 どう見られるんだろうって、緊張しました。ちなみに、テーマはどのように決めたんですか?

近藤 メンバーでテーマを出し合います。

永嶋 今回は2冊なので、色々な熟語が候補にあがったのですが、「恋愛」は、あまりにもパスする方が多くて早々に消えました。

近藤 私は別にいいんですけどね(笑)。

永嶋 スプラッタはいいけど、恋愛はちょっと……という方が多かったですね。

乙一 意外です。

近藤 最終的に、『迷』『惑』は、「迷う」「惑う」「迷惑」どれでもテーマにできて、広がりがあるかなと、決まりました。

乙一 面白い試みですよね。

近藤 全作品を読んだら、共通点もあり、トーンが一定しつつ、作家の個性がでていましたね。

乙一 ネタがかぶったらどうしようと心配しながら書いたんですが、けっこう人が死んでいますよね(笑)。ミステリーっぽくはならないかなと思い込んでいたので、みんな、容赦なく不幸な話を書いているのが印象的でした。

永嶋 タイトルが迷惑ですからねぇ。いくつか幸せな気分になる作品もありますが……。けど、乙一さんにそこをつっこまれるとは思わなかったです。スプラッタをあれだけ容赦なく書いている人に!

乙一 確かに、そうですよね。

近藤 参加した本で言うのもなんですが、良い本になったなぁと思っています。

新潮社 波
2017年8月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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