<東北の本棚>痛快 人の心もきれいに

レビュー

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江戸城 御掃除之者!

『江戸城 御掃除之者!』

著者
平谷 美樹 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041051894
発売日
2017/02/25
価格
691円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>痛快 人の心もきれいに

[レビュアー] 河北新報

 江戸城の清掃を担当する御掃除之者が、さまざまな無理難題を乗り越え、任務を果たそうと奮闘するユニークな時代小説。着想の妙とユーモア、奇想天外なストーリーテリングが相まって、読後感は痛快そのもの。
 本書は文庫書き下ろし。「御掃除は戦でござる」と銘打ち、江戸時代を舞台にした短編3作を収録している。1作目は「音羽殿の局御掃除の事」。御掃除之者の組頭である山野小左衛門は、上司から男子禁制である大奥の掃除を極秘に命じられる。7代将軍徳川家継の生母・月光院付き御年寄の音羽が何年も局にこもり、部屋中にごみがたまっているため、掃除を命じられたのだ。
 山野は個性的な部下6人を従え、大奥へと乗り込むが、強い抵抗に遭う。山野らと、大奥の女性陣が互いに知略をめぐらした結果、内密の事実が明らかになる。
 2作目は「象道中御掃除の事」。将軍が大金を払って取り寄せた象の道中のふんの運搬を採薬使から依頼される。象のふんには薬効があるとされ、山野らはふんを奪おうとする者から逃げて薬園に届けるため、悪戦苦闘する。
 3作目は「御殿向(ごてんむき) 開かずの間御掃除の事 『亡魂あり』」。血染めのふすま絵があり、謀殺されたとうわさされる5代将軍綱吉の御霊(みたま)がうろつくと、気味悪がられている大奥の部屋の掃除に挑む。
 掃除を通じて、物に込められた人の思いを浮き彫りにしていく手法が独創的だ。全編を通じて、ミステリー小説の要素もあり、謎解きの醍醐味(だいごみ)も味わえる。人の心まできれいにしていく御掃除之者の見事な仕事ぶりが描かれる。
 著者は1960年久慈市生まれで岩手県金ケ崎町在住。2000年に「エリ・エリ」で小松左京賞、14年に「風の王国」(全10巻)で歴史時代作家クラブ賞のシリーズ賞を受賞している。
 KADOKAWA(0570)002301=691円。

河北新報
2017年8月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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