【写真集】『花火』一瞬の芸術をリアルに
[レビュアー] 産経新聞社
全国各地をめぐって撮影した花火の写真集。赤、黄、白…鮮やかな色の光跡が、大きな同心円を描いたり、尾を引いたり、飛び散るように広がったり。あらためて眺めると、ただの爆発をよくここまで演出できるものだと感心するほどで、夜空を彩る一瞬の芸術を見事に捉えている。
主役はもちろん、そんな花火の色や形なのだが、花火写真の見どころって実は前景や背景だったりする。花火だけ写してもカタログみたいだし、どうやって臨場感を持たせるかに写真家は気を配る。本書も構成が巧みだ。
空全体を花火が埋めつくすような壮観だけでなく、遠くから眺める花火の魅力もすくい取る。にぎわう露店越しにドドーン。静かな通りの先にパパーン。そういえば花火を眺めるのって、雑踏の端で立ち見とか、屋台をひやかしながらとか、たまたま通りかかったとかで、特等席で観賞した記憶なんてほとんどない。だからリアルに感じるのかも。
本書を編んだ写真家は、自身も花火師の資格を持つとプロフィルに記されていて納得。(存)(冴木一馬/光村推古書院・2400円+税)