【児童書】『なまけてなんかない!ディスレクシアの男の子のはなし』

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なまけてなんかない!

『なまけてなんかない!』

著者
品川裕香 [著]/北原明日香 [イラスト]
出版社
岩崎書店
ISBN
9784265830428
発売日
2017/04/08
価格
1,650円(税込)

【児童書】『なまけてなんかない!ディスレクシアの男の子のはなし』

[レビュアー] 木ノ下めぐみ

 ■生きやすい社会の手がかりに

 似た形の文字を書き間違えたり、読み飛ばしたりしてしまうなど読み書きがスムーズにできない学習障害の一種、ディスレクシア。文部科学省が平成24年に行った調査では、読み書きや「聞く」「話す」などの学習面で著しい困難を示す小中学生は4・5%、40人学級に1~2人いる計算だ。

 本書の主人公、小学校に入学したばかりのりんぞうも、頑張って勉強するものの、平仮名をちっとも覚えられない男の子。担任や親に叱られ、大好きだった幼稚園の先生に「おれ、ばかだぁ じ わからないよう」と泣きながら打ち明けると、先生はりんぞうのために「ひみつのとっくん」を始めるのだった。

 知的な問題はないため努力不足と誤解されやすいが、「なまけてなんかないぞ!」というりんぞうの叫びに気づいた幼稚園の先生が学び方に工夫をこらしたように、周囲の大人が子供たちが抱える困難にいかに早く気づき、適切な支援ができるかが重要となる。誰もが生きやすい社会になるための手がかりとなる絵本だ。(品川裕香作、北原明日香絵/岩崎書店・1500円+税)

 木ノ下めぐみ

産経新聞
2017年8月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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