【聞きたい。】中西輝政さん『アメリカ帝国衰亡論・序説』

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アメリカ帝国衰亡論・序説

『アメリカ帝国衰亡論・序説』

著者
中西輝政 [著]
出版社
幻冬舎
ISBN
9784344031579
発売日
2017/08/03
価格
1,188円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】中西輝政さん『アメリカ帝国衰亡論・序説』


中西輝政さん

 ■日本はどう備えるべきか

 “アメリカ信仰”者には衝撃的だろう。アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領だが、その登場は衰退に向かう断末魔の悲鳴であり、大国・アメリカの「終わりの始まり」を象徴しているというのだから。

 100年前、米ウィルソン大統領は建国以来の孤立主義を捨てて第一次世界大戦へ参戦を表明した。以来アメリカは「パクス・アメリカーナ(アメリカによる平和と繁栄)」を築き上げ、冷戦終了後は「米一極覇権」というべき栄華の頂点に立つ。

 ところが、冷戦の勝利に浮かれたアメリカは、早急にグローバル化を進めるあまり、各地の紛争に介入しては失敗を繰り返し、テロの蔓延(まんえん)などによって世界を不安定化させてしまう。

 経済面でも民主主義の根幹を揺るがしかねないほど国民の所得格差が広がってしまった。その不満がトランプ大統領を誕生させる引き金となったのだが、保護主義的、排他的な政策はやがて経済を停滞させ、社会は混迷を深め、国力は衰退してゆくだろう…と。

 「10年、20年先を見据えれば軍事力も経済力も、もはやアメリカは絶対的な優位を保てない。唯一、優位なのが日本やNATO(北大西洋条約機構)など、しっかりとした同盟国を持っている点なのにトランプ大統領は『負担だ、重荷だ』という。アメリカの強みである自由や人権、民主主義といった価値観まで軽侮するトランプ大統領はアメリカの衰退をさらに加速させてしまうでしょう」

 では、衰退してゆくアメリカの時代に日本はどう備えるべきなのか。「防衛力、情報力を強化し地力をつける。アメリカの言いなりではなく、言うべきことはいう。台頭が著しい中国ともしっかりと対峙(たいじ)し、是々非々の立場を貫き、民主化を促す。日本はこの3方向の国家戦略をしっかりと持たねばなりません」(幻冬舎・1100円+税)

 喜多由浩

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【プロフィル】中西輝政

 なかにし・てるまさ 京都大名誉教授、国際政治学者。昭和22年、大阪府出身。京都大法卒、英ケンブリッジ大大学院修了。京都大大学院教授。正論大賞受賞。主な著書に『大英帝国衰亡史』など。

産経新聞
2017年8月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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