『幕府海軍の興亡』 金澤裕之著

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幕府海軍の興亡

『幕府海軍の興亡』

著者
金澤 裕之 [著]
出版社
慶應義塾大学出版会
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784766424218
発売日
2017/05/24
価格
7,020円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『幕府海軍の興亡』 金澤裕之著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

 明治日本は近代海軍の建設に力を入れ、日露戦争の頃には世界有数の海軍国になった。このように急速な成長を可能にした要因の一つとして、前身の幕府海軍時代の蓄積を挙げ得るが、従来その実態は不明な点が多かった。本書は、幕府が近代海軍という未知の軍事力をゼロから作り上げていった過程を丹念に明らかにした労作である。

 ペリー来航に衝撃を受けた幕府は、勝海舟らの尽力により、洋式軍艦の導入、船員の養成を進めた。咸臨丸(かんりんまる)の米国派遣、長州藩との戦争などを通して、幕府の海上軍事力は「水軍」から「海軍」へと転換していった。著者は、幕府海軍は艦隊行動能力こそなかったものの、個艦単位の運用技術はかなりの水準に達していたと指摘している。能力に基づく人材の登用、軍艦の外交交渉への活用など、海軍力の整備を通して近代的な発想が育っていった点も特筆される。

 幕府海軍の遺産は新政府に継承され、帝国海軍の基礎となった。短期間で一流の海軍を作り上げた日本の経験は、世界史的に見ても大変興味深いものと言えよう。

 慶応義塾大学出版会、6500円

読売新聞
2017年8月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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