『歴史の証人 ホテル・リッツ』 ティラー・J・マッツェオ著

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歴史の証人 ホテル・リッツ

『歴史の証人 ホテル・リッツ』

著者
ティラー・J・マッツェオ [著]/羽田詩津子 [訳]
出版社
東京創元社
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784488003852
発売日
2017/06/30
価格
2,700円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『歴史の証人 ホテル・リッツ』 ティラー・J・マッツェオ著

[レビュアー] 土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

 パリの名門ホテルの一世紀余りの歴史を縦糸に、そこに足跡を残した人たちのさまざまなエピソードを横糸に、豪華絢爛(けんらん)に綴(つづ)られた年代記的なノンフィクションである。

 軍人・政治家ならゲーリング、カナリス、ド・ゴール、チャーチル。作家・ジャーナリストならキャパ、プルースト、コクトー、ヘミングウェイ、サルトル、ボーヴォワール、フィッツジェラルド。ディートリヒやバーグマンなど女優たちに、ココ・シャネルがいるかと思えばフランスに流れ着いた若きホー・チ・ミンは調理場で皿洗いに精を出して、ダイアナ妃の悲劇を思い出す読者もいるだろう。戦争あり平和あり、経営者一族の有為転変(ういてんぺん)に、従業員たちは各国のスパイとなって働く。

 読み終わってみれば、いやはやなんともこれはホテル・リッツを舞台に取った物語ではなかった。ホテル・リッツこそ文字通りの舞台であり主役だったのではないか、ここを行き交った人たち自らこの舞台の登場人物のひとりと意識していたのではないか。人々が離合集散するホテルの「場の力」をあらためて感じさせられた。羽田詩津子訳。

 東京創元社、2500円

読売新聞
2017年8月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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