押韻も見事に訳出、新しいシェイクスピア

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押韻も見事に訳出、新しいシェイクスピア

[レビュアー] 図書新聞

 生き別れになった双子の兄弟と、それに仕える双子の召使いが巻き起こす一騒動を描くシェイクスピアの初期喜劇。兄と弟がとりちがえられたことによって何が真実かわからなくなる、登場人物たちの勘違いに次ぐ勘違いも面白いが、彼らの奔放な演技や押韻を意識した言葉遊びこそが、シェイクスピア劇の真骨頂、まさに「演戯」と言うほかない。さらに、河合祥一郎による詳細な解説や訳注で作者の書き間違いや時間・場所の跳躍なども明らかにされるが、それが単なるシェイクスピアの「まちがい」とならずに作品解釈や上演の際の問題につながっていくのも興味深い。流石シェイクスピア、自由すぎる。一つ一つの台詞回しにどうしてもにやけてしまう。演劇でさえも自由にしてしまうのだ。(河合祥一郎訳、6・25刊、一四四頁・本体六〇〇円・角川文庫)

図書新聞
2017年8月19日号(3316号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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