『豆の上で眠る』
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本当のお姉さんじゃない?
[レビュアー] 図書新聞
誘拐された小学三年生の姉・万佑子が二年後に帰還。二歳年下の妹・結衣子は、しかし彼女のことを本当の姉とは思えない。物語は、そんな妹が大学二年生になり、母の病気を見舞うために実家に帰るところから始まる。姉妹の関係を中心に、「本当」の家族とは何かを鋭く問いかけるミステリー。妹の視点から語られるエピソードは何から何まで“姉は偽物”という疑惑に収斂し、その不穏が頂点に達したとき、真相が顔を出す。ベストセラー街道を走り続ける著者だが、作家としての力量、技術が正当に評価されているとは言い難い。それゆえに、解説の宇田川拓也による、彼女の「超絶技巧」に対する言及は極めて重要である。アンデルセン童話「えんどうまめの上にねたおひめさま」から想を得たタイトルもひねりが利いている。(7・1刊、三六八頁・本体五九〇円・新潮文庫)