「ドーパミン・サイクル」をつくって、子どもの脳をかしこく育てよう

レビュー

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本当にかしこい脳の育て方

『本当にかしこい脳の育て方』

著者
茂木健一郎 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
芸術・生活/家事
ISBN
9784534055187
発売日
2017/08/10
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「ドーパミン・サイクル」をつくって、子どもの脳をかしこく育てよう

[レビュアー] 印南敦史

5歳までにやっておきたい 本当にかしこい脳の育て方』(茂木健一郎著、日本実業出版社)の著者は、本書の冒頭でこう明かしています。

最新の脳科学の研究では、人間の脳は3歳までに80%が完成するといわれています。(中略)ほとんどの機能は3〜4歳ごろまでに発達し、いちばん遅く発達がはじまる社交性も、5〜6歳ごろまでには基礎が完成しています。

つまり、0〜5歳までが脳を活かす土台をつくるとても大切な時期といえるのです。

では、子どもの脳の土台づくりにとって、もっとも重要なことはなんでしょうか?

それは、

「0〜5歳までの間に、できるだけドーパミンを出せるようになる!」

これが、脳科学者としての私の結論であり、ドーパミンを出せるようになるために親子でいろいろな経験をすることが、すなわち「子どもの可能性を見つける宝探し」なのです。(「はじめに」より)

いうまでもなく、ドーパミンは脳内の神経伝達物質。ドーパミンが出れば出るほど、私たち人間は物事に対する意欲が高まり、何事にも積極的に取り組めるようになるということ。では、ドーパミンを出すにはどのようなことが大切なのでしょうか? この問いについて著者は、「幼少期にドーパミンを出すサイクルをつくりあげること」だと主張しています。

ちなみに、ここが重要なポイントなのですが、大人になってから急にドーパミンを出すサイクルをつくることはできません。ドーパミン・サイクルはある日突然、すぐに身につくものではないからです。(中略)0〜5歳という脳を育てる大切な時期に、しっかりとドーパミン・サイクルをつくりあげていくことで、子どもが将来どんな道に進むとしても、社会をたくましく生き抜ける「本当のかしこさ」を持った大人になれるのです。(「はじめに」より)

そこで本書では、0〜5歳までの子どもを持つお父さんお母さんを対象に、ドーパミン・サイクルをつくり出すための脳の育て方を解説しているというわけです。第2章「一生役立つ! ドーパミン・サイクルの育て方」から、いくつかのポイントを抜き出してみましょう。

ドーパミン・サイクルは遊びのなかでつくられる

著者によれば、ドーパミンを出すということ自体が、子どもの大切な仕事。なぜなら子どもは遊びのなかで学び、学びながら遊びを楽しむから。つまり遊びのなかでどれだけたくさんのドーパミンを出せるか、いわば「ドーパミン遊び」が重要になってくるということです。

ちなみに「ドーパミン遊び」とは特別なものではなく、なんでもいいのだといいます。ただし、大切なポイントがひとつだけあるそうで、それは「変化」。いきいきと変化を楽しみながら遊んでいる時間に比例して、ドーパミンが出やすい脳が発達していくというのです。

そして、子どもの脳にドーパミンがあふれるのは、「これまで経験したことのないはじめてのこと」を体験したとき。著者が「0〜5歳は脳の土台づくりの時期」と伝える理由もここにあるというのです。この時期の子どもにとっては、日常のあらゆることが「これまで経験したことのないはじめてのこと」。それを体験することが、すなわち「変化」だということです。

ドーパミンを出す脳の回路は、不確実なことをワクワクドキドキしながら体験すると、もっとも強化されます。だからこそ、子どもはありとあらゆる「はじめて」に興味を示すのです。(46ページより)

だからこそお父さんお母さんは難しく考えず、子どもに「はじめて」や「ワクワクドキドキ」のドーパミン体験をさせてあげるべきだということ。ただしその際に大切なのは、チャレンジのレベルを調整してあげること。簡単すぎず難しすぎず、「失敗する可能性もあるけれど、成功する可能性が少し多いくらいのレベル」がドーパミン体験という観点からはベストだというのです。(44ページより)

ドーパミン体験を増やせば脳がロケットスタートできる

ドーパミンを出すサイクルづくりが一度できてしまえば、多くのメリットがもたらされるそうですが、そのひとつが「脳のロケットスタート」。ドーパミン体験を増やせば増やすほど、脳は覚醒しながら快感を得るもの。そのため、さらにドーパミンの分泌を促すようになるということです。

チャレンジが楽しくなって豊かに発達した脳は、さらに高度な達成感を求め、意欲的に探求したり、いろいろなものに興味や好奇心を持ったりすることが可能になるのだといいます。つまり脳がロケットスタートして、どんなことにもやる気を持てる子どもへと育っていくというわけです。

たとえば、家でも簡単にできるドーパミン体験のひとつがお絵描き。幼少期のお絵描きは、脳の空間認識能力や表現力、想像力を鍛える最高の遊びだというのです。紙と筆記用具さえあればどこででもはじめられますし、何度繰り返しても、まっさらな紙になにかを描く「ワクワク」や「はじめて」考えられるのも魅力。

でも脳をロケットスタートさせるためには、「子どものつくったものをかたちにする」という工夫を加えるとベストだといいます。目標(ゴール)を設定し、その実現を目指すプロジェクトを作り、達成感を味わわせるということ。

ただのお絵描きではなく、1冊の絵本をつくってみる、短いアニメをつくってみるなどの目標を具体的に決め、親も一緒になってプロジェクトに参加する。そして絵本やアニメなど、目に見えるかたちの結果を見せると、脳はロケットスタートし、さらにドーパミンがあふれ出てくるというわけです。

絵本やアニメをつくるなどというと難しそうにも思えますが、フリーソフトやサービスを利用すれば思いのほか簡単に実現できるもの。「どんなつくりかたができるのか」という段階から子どもと一緒に考えれば、それがプロジェクトを立ち上げる醍醐味にもなるという考え方です。(48ページより)

「できた!」という成功体験をたくさんさせよう!

0〜5歳は自我が芽生え、「あれをやりたい」「これができる」という思いが次第に強くなっていく時期。しかし、そんなときに大人が「できるわけがない」と否定してしまうと、子どものドーパミン・サイクルを育てていくうえでの阻害要因になりかねないといいます。子どもの可能性の芽を摘み取ってしまう恐れがあるということ。

つまり大切なのは、可能な限り子どものいうことを否定したり、横から口出ししたりせず、まずはそっと見守ってあげること。そして、それがうまくできたら、小さな成功であっても見逃さず、たくさんほめてあげること。「できた!」という達成感を「よくできたね!」「えらいね!」とたくさんほめられる喜びによって、脳内でドーパミンが二重に分泌され、脳の神経経路が強化されるというのです。

ほめることの大切さについては脳科学的にも立証されています。

お父さんやお母さんにほめられると、他人にほめられるよりもドーパミンの分泌がさらに増えるのです。これはまさに脳にターボがかかった状態だといえます。

ですから、子どもを注意深く観察しながら、できるだけたくさんほめてあげることがドーパミンをあふれ出させる秘訣といえます。「まだ○歳なんだからできっこない」という固定概念を捨てて、年齢に関係なく、できるだけ多くのチャレンジを子どもに経験させて、できたことはしっかりほめてあげてください。(52ページより)

たとえ失敗しても、「もう一度がんばって見よう」などと一声かけてあげるだけでも、子どものさらなるチャレンジへの意欲を促すことが可能に。子どもにとって失敗することは、「成功したい」という願望につながり、さらにドーパミンをたくさん分泌して能力を押し上げる要因となるのだそうです。そしてそれが、のちに子どもが自発的に学習するための意欲に結びついていくということ。(51ページより)

子どもをほめるときは「条件つきほめ」+「無条件ほめ」が有効

子どもをほめるという行為には2種類あるのだそうです。まずは「具体的にほめる」こと。「なにができてえらかったのか」「なににチャレンジしたことがえらいのか」ということを、できた直後にほめることが大切だというのです。子どもは自己承認欲求が強いので、ほめてもらえると「認めてもらえた」と思うもの。その結果、子どもの脳にはドーパミンが分泌されるということです。

そしてもうひとつは、「存在自体を受け止めてほめてあげる」=「無条件にほめる」というもの。なんでもないときに「かわいいね、好きだよ」と抱きしめて頭をなでてあげる。朝起きたときに「おはよう、きょうも元気でうれしい」と微笑みかける。そんな無条件の愛、無条件にほめられる行動を通して、子どもは「お父さんお母さんに認めてもらっている」という自己承認欲求を満たすということ。そのため、「条件つきほめ」も「無条件ほめ」も大切。

無条件に愛してあげて、「これもできたらすごいね」といったような条件つきでほめてあげるというのは、アスリートとコーチの関係によく似ていると著者はいいます。なぜなら、ご両親のほめ方によって子どものドーパミン・サイクルの成長度も変わってくるから。いわばお父さんお母さんは、子どもの最高のコーチだということです。(54ページより)

脳を育てるといっても、本書の内容は決して難解なものではありません。それどころか、すぐに応用できることばかり。0〜5歳の子どもをお持ちのお父さんお母さんは、ここから大切なことを得られるはずです。

メディアジーン lifehacker
2017年8月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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