戦国を駆け抜けた、稀代の四姉妹『雑賀の女鉄砲撃ち』佐藤恵秋

レビュー

3
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雑賀の女鉄砲撃ち

『雑賀の女鉄砲撃ち』

著者
佐藤恵秋 [著]
出版社
徳間書店
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784198643997
発売日
2017/05/31
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

戦国を駆け抜けた、稀代の四姉妹

[レビュアー] 縄田一男(文芸評論家)

 今年は、新鋭が次々と力作を放つこと、例年にないほど著しいが、本書『雑賀の女鉄砲撃ち』もその一つ。

 紀州雑賀荘宮郷の太田左近の四人姉妹――鶴は聡明で温かく、梟は奔放にして一途、小雀は気弱なるも優しく、蛍は活発で軽やかに我が道を行く、というように性格もさまざま。

 物語は、この四人が、武田の三河侵攻に際して、織田信長が三千挺の鉄砲による三段射撃法を行い、天下無敵といわれた武田の騎馬隊がものの見事に粉砕されるのを目撃するところからはじまる。

 もともと雑賀衆は優れた鉄砲撃ちを輩出する技術集団であり、四女の蛍は、幼い頃から鉄砲に魅せられた少女で、信長の戦法に対して、「三人組み撃ち」と呼ばれる分業速射術を編み出すなど天才肌の持ち主。

 ストーリーは、石山合戦、三木城干殺し、天正伊賀の乱、本能寺の変、小牧長久手の戦いから大坂の陣まで、四姉妹が戦国乱世に翻弄されつつも、たくましく生きていくさまが描かれていく。

 砲術に関する綿密な考証はさすがで、宿敵・鈴木孫一との対決は、刀によるそれとは違った妙味がある。信長→秀吉→家康と天下取り三代の武将と蛍との関わりも面白い。

 信長からは、その物怖じしない性格を気に入られ、蛍もさまざまな意見を具申。その信長が本能寺の変で倒れた後には、家康の危機を救い、憎っくき秀吉とは徹底的に対立していき――このあたりは是非、御自身の目で確かめられたし――遂には秀頼は本当に秀吉の子なのか、という歴史の話にまで踏み込んでいく手腕は、なかなかのもの、といわねばなるまい。作中には『忍びの者』(村山知義)へのリスペクトもうかがえる。力作といえよう。

光文社 小説宝石
2017年9月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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