上司から意味なくキレられたらどうすべき? 「異情」な人に向き合う時の心がまえ

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「異情」な人々

『「異情」な人々』

著者
和田秀樹 [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784894517691
発売日
2017/08/04
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

上司から意味なくキレられたらどうすべき? 「異情」な人に向き合う時の心がまえ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

きょうご紹介したいのは、『「異情」な人々』(和田秀樹著、フォレスト出版)。「異情」とは聞きなれない言葉ですが、これは精神科医である著者による造語です。

「異情」は、「他の人と異なる感情」という意味ではありません。私が「異情」に込めた意味はこうです。

「異情」とは、「人間の合理的思考を奪う感情」。

これが「異情」の意味です。

もう少し噛み砕いて言えば、「感情コントロール」ができずに思考停止状態となったり、言動が暴走する状態を引き起こしたりするような感情です。「異情」とは、その意味で言えば、人の健全な状態の感情がいくらか損なわれた状態とも言えます。

(「はじめに」より)

著者は、日ごろから誰でも一時的に「異情」に陥っていたり、陥りつつあることがあるのだと主張しています。人はポジティブな感情とネガティブな感情を併せ持っているものですが、特にネガティブな感情の場合、それがあまりに激しくなってしまうと、その感情に振り回されて合理的思考ができなくなってしまうというのです。するとネガティブな感情は、さらにネガティブな感情を呼び込んでしまうことに。つまり、それが「異情」だというわけです。

そして「異情」状態になってしまうと、ちょっとしたことでキレたり、暴言を吐いたり、攻撃的になったり、泣きわめいたり、場合によっては暴行に及ぶといった行動に陥るのだとか。そうなると必然的に、後悔、絶望といったネガティブな感情に振り回されてしまうわけです。

だからこそ、「感情的にならない」ことが重要だと著者はいいます。激しい感情に振り回されて、合理的思考を奪われないようにすることが大切だとも。そこで本書では、「異情」状態の症状、その原因、本質、そして、そのような人に対する解決法を明らかにしているのです。第1章「『異情』状態とは何か?」に目を向け、「異情」がどんなものであるかを確認してみましょう。

「異情な人」が感情を表すとき、どんな形で出てくるのか?

うれしいことがあったとき、身近な人と一緒にその喜びを分かち合えることができるのは人間だけ。うれしいことを人と分かち合えば、喜びは倍増します。逆に悲しいことを人に話すことによって、その悲しみが半減することもあるでしょう。つまり、感情を表すことそれ自体は悪いことではないのだということです。

ただし、注意が必要。特に「怒り」「妬み」「憎しみ」などのネガティブな感情は、生の状態で表してしまうと、相手も不愉快になるもの。自分もその感情に振り回されてしまうことになるわけです。たとえば「瞬間湯沸かし器」のような人はどこにでもいますが、そういうタイプは「自分で感情をコントロールできない、感情に支配されているタイプ」だというのです。しかも、そもそも本人が、怒りを爆発させた原因がどこにあるのかを分かっていない場合が多いのだとか。

たとえば、上司が意味不明の怒りをぶつけてきたとします。冷静になったころを見計らって尋ねてみると、出勤前、朝から奥さんと子どものことで口論になり機嫌が悪かっただけだったということがわかりました。そんなとき、どんな対応が適切でしょうか?

A 「家庭の問題を会社にまで持ち込まないでください」と文句を言う。

B 納得していないが、とりあえず我慢する。

C いったん我慢するが、ことの経緯をさらに上の上司へ報告する。

(20ページより)

この場合、最悪なのはAの対応。こんな対応をしてしまう人は、上司と同じように感情をコントロールできていない人だというのです。生の感情同士が同じ土俵でぶつかり合っているだけなので、それがまた新たな感情を誘発してしまうことに。だとすれば理解どころか、対立が深まるばかり。そうなると、関係の収拾は不可能に近くなるということです。Bと答えた人は、可もなく不可もなく、現状をそのまま受け入れるだけ。上司の異動、もしくは自分自身の異動を待つしかないというわけです。

なお、著者であれば基本的にはCを選択するそうです。なぜなら企業のコンプライアンスがうるさくいわれる昨今、そうした振る舞いは上司の上司も見過ごすわけにはいかないから。(18ページより)

「ずる賢く振る舞うこと」のススメ

ただし、この選択には前提条件があるのだといいます。その感情的な上司が客観的に見て無能で、学ぶべきスキルもなく、どう考えても会社の利益にまったく寄与していない場合に限るというのです。たとえばその上の上司が、その上司を子分のようにかわいがっている場合などは逆効果。つまりは、人間関係の観察も大切だということです。

また、Bの「我慢」という選択も間違いではないといいます。感情的な言動につきあうと、たしかにストレスになるもの。しかし感情的言動のレベルが、健全なメンタリティを保てなくなるほど常軌を逸しているのであれば問題ですが、そうでなければ一定の期間だけ我慢してみるのもいいということです。

◎ 仕事の進め方に学ぶべき点がある。

◎ 会社の利益に大きく寄与している。

◎ 役員候補である。

◎ 超優良企業にヘッドハンティングされそうだ。

(23ページより)

たとえばビジネスパーソンとして、相手がそんなアドバンテージを持っているのであれば、良好な関係を築いておいたほうがいいということ。だとすればそのあたりは、この状況と上司のパーソナリティによって異なってきそうでもあります。

「ずるい考え方だ」という意見もあるでしょうが、著者はそれでもいいと思っているのだそうです。会社は家族でも趣味のサークルでもなく、上司でも部下でも、会社の利益を追求し、その利益の「分け前」を得ることが第一の目的だから。不正に関わっているというようなことでない限り、我慢することも間違いではないという考え方です。むしろ、生活の糧を維持しながら、ステップアップを模索するべき。

◎ 昇進の道を模索する。

◎ 資格を取って転職する。

◎ 起業を考える。

(24ページより)

そんなスタンスでいいということです。(22ページより)

ネガティブな感情を表に出さないためのポイント

「家族的経営」という言葉が一般的であることからもわかるとおり、とかく日本人は会社における人間関係に「情緒的なファクター」を求める傾向があるもの。しかし、利害が最優先される組織に、情緒を求めることは必要でしょうか? 著者はそんな疑問を投げかけます。

会社や組織の構成員として生きていくためには、「怒り」「妬み」「憎しみ」といったネガティブな感情は表に出さない。そう肝に命じておくことが大切だというのです。そこで、そうならないために、著者はここで「感情の法則」を紹介しています。これは、神経症の治療法として、森田正馬(まさたけ)博士が考案した基本概念のひとつなのだそうです。

「感情は放っておけば、だんだん収まってくる」(26ページより)

そこそこ感情を共有できる家族や恋人、つきあいの長い親友であれば、ちょっと甘えて生のネガティブな感情を口にすることは許容範囲でしょう。しかし会社、組織など、ある意味で「皮相的」な人間関係の場において、それは得策ではないといいます。そうではなく、少しの間放っておくのが最善の方法だということ。そうすれば、お互いの感情が収まってくるから。(25ページより)

著者がいうように、たしかに「異情」な人はいるもの。だからこそビジネスの現場においては、自分が「異情」になることなく、柔軟に立ち回ることが必要になるのでしょう。では、どうすればいいのか? その問いに対する答えが、本書には詰まっています。

メディアジーン lifehacker
2017年8月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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