プレゼンテーションのスキルを重視するGEのメソッドから学ぶべきこと

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世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられているプレゼンの基本

『世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられているプレゼンの基本』

著者
田口 力 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784046020253
発売日
2017/07/13
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

プレゼンテーションのスキルを重視するGEのメソッドから学ぶべきこと

[レビュアー] 印南敦史

世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられているプレゼンの基本』(田口 力著、KADOKAWA)の著者は、元GEクロトンビル・アジアパシフィック プログラム・マネジャー。世界最高のリーダー育成機関として知られる「クロトンビル」で、日本人として唯一リーダーシップ研修を任されたという実績の持ち主です。

そんな実績をもとに書かれた本書の冒頭には、「GEでは、プレゼンテーションによってその人のキャリアが決まってしまうことがある」のだと書かれています。特に20世紀最高の経営者と呼ばれたジャック・ウェルチのCEOに就任してからは、プレゼンの重要性が増したのだとか。彼は組織における意思決定のスピードを上げるべく、それまで会議に必要とされていた分厚い資料を廃し、プレゼンによって決裁をするというシステムに変えたというのです。

組織にとっての目的は「意思決定スピードの向上」でしたが、GEの社員はそれにより、「本質的なことのみに焦点を当てる思考」が加速し、さらには、1人ひとりが「ムダな業務の排除」「あらゆる仕事のスピード化」を実現することにつながりました。

つまり、「プレゼン」の技術向上は、「あなたの仕事の質とスピード」の両方に直結するのです。

(「はじめに なぜGEでは『プレゼン研修』は世界で最も人気があるのか」より)

さらにいえば、「プレゼンの技術を磨くこと」の本当の狙いは、伝え方のスキルだけを向上させるのではなく、物事の本質を見抜き、優先順位をつけて、みんながやる気の出る方法によってコミュニケーションができるようになるということ。そんな考え方に基づき、本書ではすぐに取り入れられる考え方やノウハウを紹介しているわけです。

きょうは第1章「なぜ『簡潔さがすべてを解決する』のか」に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみたいと思います。

「いいプレゼン」「いい話し方」の基本——ABCD構造

会社の会議などで誰かのプレゼンテーションを受け、「それで結局、なにが言いたいの?」と感じたことは誰にでもあるはず。そこで著者は、私たちがよく目にする「プレゼンテーションあるある」を列記しています。

・ スクリーンやパソコンのモニターばかりを見ていて聞き手を見ない

・ スライドや資料に書いてあることをただ読んでいるだけ

・ 無関係な話に脱線してばかりいる

・ 長い。とにかく長すぎる

・ 早口で滑舌が悪いので、なにを言っているか聞き取れない、理解できない

・ 退屈で眠くなる

・ 「あの〜」「え〜っと」といった言葉癖が多くて耳障り

・ ロボットが話すよりも単調で熱意が感じられない

・ 話の筋道が論理的ではない

・ スライドに情報を詰め込みすぎていてポイントがわからない

・ 情報量は多いが、肝心のメッセージが伝わってこない

・ 専門用語や横文字をちりばめ、「自分の知識をお披露目する会」になっている

(16ページより)

なかなか辛口ですが、こうした問題がなぜ起こるのか、その根本的な原因を探った結果、著者にはわかったことがあるのだそうです。スライドを含めた会議資料の「作成」に多くの時間をとる一方、その前段階の「分析」や「構想」、プレゼン現場での「実施」に備えるための時間が不十分だということ。そして一般的にプレゼンは、次のような時系列のプロセスを経なければいけないのだと強調しています。

1. 聞き手の分析(A—-Analyze Audience)

2. メッセージ構築(B—-Build Message)

3. スライド構成(C—-Construct Slide)

4. 伝え方の工夫(D—-Deliver Presentation)

(18ページより)

著者はそれぞれの頭文字をとって、これをプレゼンの「ABCDストラクチャー」と名づけているのだといいます。ちなみにこの4つのうち、多くの人は「C」の時間、つまりスライド・資料を作成することばかりに時間を割いてしまっているのが現実。そして、それこそが、上記「あるある」の原因だということです。

逆にいえば「ABCD」のそれぞれをきちんと経ることができれば、結果として聞き手の「E」(Engagement—-エンゲージメント=愛着心、堅い約束)を獲得できるということ。

A…Analyze(分析)「聞き手はどういう人か?」

B…Build(構築)「メッセージをどう組み立てるか」

C…Construct(構成)「簡潔なスライド・資料をいかにつくるか」

D…Deliver(伝える)「わかりやすく伝えるにはどうするか」

プレゼンの目的がなんであれ、聞き手からエンゲージメントを得ることはきわめて重要だと著者。失敗に終わるプレゼンは、この「ABCD」のいずれか、あるいはすべてがうまくいかなかったため、「E」を獲得できなかったということなのです。(16ページより)

「削る作業」を繰り返すとなにが残るか

ガタガタなプレゼンをしてしまった参加者に対して、著者は「まず、書いてあるものを3分の1にして、さらにそれを3分の1にしてください」と、簡潔なプレゼンを行うためのコツを伝えるのだそうです。

冗長なプレゼンテーションになってしまう根本的な原因は、プレゼン全体のメッセージの中で自分が一番伝えたい「コア・メッセージ」がなんなのかをプレゼンする本人がわかっていないということにあります。(22ページより)

なにを伝えたいのか、その中心的メッセージがはっきりしていない。メッセージに対する確信が持てないため、いろいろな情報を1枚のスライドに詰め込み、不安を解消しようとする。そのため、スライドの枚数が増えてしまうというわけです。しかしコア・メッセージがはっきりとしていれば、実はスライドを使用しなくてもプレゼンは可能。スライドはあくまで、プレゼンにおいてはサプリメント(補助剤)でしかないと心得るべきだといいます。

さて、ここで上記の「まず、書いてあるものを3分の1にして、さらにそれを3分の1にしてください」という言葉に立ち戻りましょう。著者は研修にお家、実演についての振り返りをしたのち、オリジナルのスライド(10分用)をパソコンのモニターに出してもらい、この指示どおりに修正してもらうのだそうです。

何気ないことのようにも思えますが、実はこの「書いてあるもの」という言葉には2つの意味があるのだといいます。1つは、“スライドの枚数”に対してという意味で、全体のスライドを3分の1に削り、さらにそれを3分の1にしてもらうということ。そして2つ目の意味は、“1枚のスライドに書いてある文字数”を同様にして減らすということ。こうしてギリギリまで贅肉を削ぎ落とすと、プレゼンの骨格が見えてくるというわけです。

人はつい、いろいろと余計なスライドをつくり、文字や図表などを入れ込みたくなってしまうもの。しかしそれでは、結果的に伝わらなくなってしまいます。そこで必要になってくるのが、贅肉を削ぎ落とすこと。だからこそ、この「3分の1」×「3分の1」によって、最後にコア・メッセージがはっきり示されるようなスライドが残るかどうかを確認すべきだということです。

同時に、各スライドにある文字などの情報は、「本当に必要なものかどうか」の確認も怠るべからず。スライドは“巨大なカンニング・ペーパー”ではないということを肝に命じなければならないという著者の言葉には、強い説得力があります。(22ページより)

脳が「わかりやすい」と感じる話し方

本書全体を通じて著者が伝えようとしている中心的なメッセージは、「プレゼンは“簡潔さ”が大切である」ということ。伝えたいメッセージ、スライドや資料、伝え方のすべてにおいて、“簡潔さ”を念頭に置くべきだという考え方です。そしてここでは脳科学の知見から、「簡潔さを重視すべき理由」が解説されています。

脳は体全体から見たら体重比でわずか2%にすぎませんが、エネルギーの消費量は全体の20〜25%という大きな割合となっているのだそうです。そのため、脳は自動的にエネルギーの消費量を抑えようとするというのです。

難しいことを考えたり、わかりにくいことを理解する努力をしたりすると、エネルギーの消費量が増えるので、脳はそうしたことを自己防衛として嫌うのだとか。逆にわかりやすいことに対しては、エネルギーの消費量を抑えることができるため、「好ましい」と感じるというのです。

つまり煩雑なスライドを使い、論理的でない文脈のプレゼンをすると、聞き手の脳は「わかりにくい」と判断し、無意識のうちに「嫌い」というレッテルを貼ってしまうことになるわけです。

もちろん、どの程度簡潔であればいいのかは人ぞれぞれですし、簡潔にしすぎても聞き手を不安にさせるだけ。しかし聞き手の脳が短時間で処理できる情報量を考え、聞き手の好みを推測し、できる限り簡潔にできれば、それは「わかりやすい」プレゼンになるということです。(26ページより)

「簡潔さ」や「シンプルであること」の重要性を強調しているだけあって、本書はその内容も簡潔にまとめられています。そのため、とても読みやすいはず。プレゼンのパフォーマンスを効率的に高めたいのであれば、読んでおくべきかもしれません。

メディアジーン lifehacker
2017年8月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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