『西洋美術の歴史8 20世紀』 井口壽乃、田中正之、村上博哉著

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西洋美術の歴史 8

『西洋美術の歴史 8』

著者
三浦 篤 [著]/井口 壽乃 [著]/小佐野 重利 [著]/小池 寿子 [著]/村上 博哉 [著]/田中 正之 [著]
出版社
中央公論新社
ISBN
9784124035988
価格
4,104円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『西洋美術の歴史8 20世紀』 井口壽乃、田中正之、村上博哉著

[レビュアー] 伊藤亜紗(美学者・東京工業大准教授)

 マルセル・デュシャンが男性用小便器を展覧会に出品しようとしてから今年で100年。ルネサンスや印象派の作品は好きだけど、現代アートはどうも難解で…と苦手意識を持つ人は多い。「芸術」の定義がますます曖昧になり、非西洋に出自を持つ作家の作品に出会う機会も増えるなか、その流れを通覧できる頼もしい一冊がようやく登場した。

 本書がすばらしいのは、「流れを通覧できる」と言っても、編年体式の、時系列順の記述にはなっていないことである。章ごとに「抽象」「身体」「政治」「メディア」等のテーマが設けられ、複数の視点から歴史を描き出す構成。テーマに沿って作品が紹介されていくので、さながら「読む展覧会」のようである。

 現代アートの難解さの原因の多くは、作者がその作品を通して取り組もうとしている問題を、鑑賞者である私たちが共有できないことにある。なぜマレーヴィチは真っ黒い正方形だけの絵を描いたのか。なぜウォーホルはモンローの顔を反復するのか。本書は、20世紀の美術が扱ってきた問題の深みと面白さを十分に教えてくれる。

 中央公論新社 3800円

読売新聞
2017年8月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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