『韓国浪漫彷徨』
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<東北の本棚>近現代史に思いをはせ
[レビュアー] 河北新報
永遠の隣国・韓国。同国を訪問し続ける著者が、訪れた場所に刻まれた日韓の近現代史に思いをはせ、出会った人々との交流をつづったエッセー集。「浪漫彷徨(ほうこう)」3部作の2作目。
「ああ、板門店」「景福宮と朝鮮総督府」など全9話を収録。「パゴダ公園のハラボジ(おじいさん)」は、1990年にソウルのパゴダ公園で出会った老人、劉載晃(ユジェファン)さんとの長い交流の軌跡を記した。
三・一独立運動における日本軍の弾圧と抵抗する民族の姿を刻んだレリーフが公園にある。劉さんは、レリーフを解説する日本語ガイドをしていた。文通や電話などでやりとりを重ね、著者は劉さんの激動の人生を知る。
劉さんは太平洋戦争末期の44年、24歳で日本に連行され、北海道千歳飛行場で過酷な労働を強いられた。終戦により祖国に戻ったが、朝鮮戦争で義勇軍に徴用された。「2度の徴用は日帝のせいです」。劉さんはそう言っていたという。
「自分のような不幸を未来に繰り返してはいけない」という思いこそ、劉さんの生きる意味、日本人へのガイドを続ける理由だったと、著者は悟る。劉さんは2006年に亡くなった。
著者は1936年一関市生まれ。3部作1作目「無頼派浪漫彷徨」は昨年発刊された。
三一書房03(6268)9714=1836円。