【燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』刊行記念対談】燃え殻×大槻ケンヂ/大人にだってフューチャーしかない
[文] 新潮社
サブカルとは何だったのか
燃え殻 しかしこんなこと大槻さんに伺うのは大変畏れ多いんですけど、サブカルって何なんですかね。
大槻 それは、うーん……宮沢章夫さんに聞いてください(笑)。
燃え殻 サブカルって一回滅びたじゃないですか。
大槻 そんな応仁の乱みたいな言い方しないでよ、怖いよ。まあでも、学校教育から落ちこぼれた人間が、プライドを保つために自分を別のベクトルで教育するんですよね。そうしてカウンターカルチャー、サブカルチャーを修める訳です。ちっぽけなプライドじゃないですかね。
燃え殻 本当にそうですね。でも90年代って、プロレスとかサイババとかエヴァンゲリオンとか“よくわからないもの”がまだカルチャーの中心にあった時代のように感じませんか。
大槻 なんか今『部屋とYシャツと私』みたいなまとめ方をしましたけど(笑)。まあそんな感じ、しますよね。
燃え殻 この小説にも書いたんですけど、「なんだかよくわからなかったから、わからないままだから今でもボクの青春なんだ」とも思うんですよね。
大槻 わからないっていうのは今、意図的な表現の手法になっちゃいましたよね。ゴダールとかは置いておいて、『2001年宇宙の旅』でそのジャンルが偶発的に生まれて、『エヴァンゲリオン』はそれを意図的にやったと思うんですけれど。わからないから、みんながそれを議論の対象にする。
燃え殻 そういう表現方法ですよね。僕、小沢健二のファーストアルバム『犬は吠えるがキャラバンは進む』を最初聴いたときに、唖然とするぐらいわかんなかったんですよ。え、これ、『ROCKIN’ON JAPAN』何て言うんだろうって。
大槻 いいね、当時の世相を表す最高のフレーズだね。
燃え殻 本当にそう思ったし、プロレスを観ても、ターザン山本はこれをどう切り取るんだろうって。だからあの頃ずっと「わかりたい」って思ってた気がするんです。足がつるぐらい背伸びしながら。
大槻 押さえておかなきゃってやつね。
燃え殻 今になってわかるとかじゃなくて、あの頃背伸びしてわかりたいって思ってたこと自体を懐かしめるんですよね。最近は何でも面白いかどうか、ネットで事前に調べるらしいんです。でもあの頃はもう訳わかんないんだけど、お金ないのに買っちゃったし「面白い」って言い張るみたいな(笑)。