人生をうまくやるには「考えない」ことが大切? そのために必要な「ラクする」技術とは

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考えなくてもうまくいく人の習慣

『考えなくてもうまくいく人の習慣』

著者
野呂エイシロウ [著]
出版社
ワニブックス
ISBN
9784847095931
発売日
2017/08/25
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

人生をうまくやるには「考えない」ことが大切? そのために必要な「ラクする」技術とは

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

人間は1日に約6万回思考する生き物だと言われています。睡眠時間を除いて、ほぼ毎秒、何かしら考えながら生きていることになります。

しかも、その「考える」という行為の約80%が、ネガティブなものとされています。つまりほとんどの人は、1日約4万8千回、後ろ向きなことを考えて生きていることになるわけです。(「はじめに」より)

こう明かすのは、『考えなくてもうまくいく人の習慣』(野呂エイシロウ著、ワニブックス)の著者。しかし不安や心配を抱えながら仕事をしていると、さらなる不安や心配を呼び寄せてしまうもの。そんな状態では、やりたいことを実現する前に押しつぶされてしまうかもしれません。

では、どうすればいいのでしょうか? この問いに対する著者の答えこそが、本書のテーマでもある「考えないようにすること」なのだそうです。ちなみにここでいう「考えない」とは、力を抜くという意味。

川や海で溺れてしまった場合、焦ってじたばたもがいても、どんどん水の中に沈んでいくだけ。簡単に浮くために大切なのは、力を抜いてリラックスすること。置かれている状況とまったく関係ないことをしたり、力を抜いたりすれば沈まずにすむわけです。日常についても同じで、なにかあってもストレス発散したり、別のことを考えることで、いつの間にか問題解決するというケースも少なくないという考え方。

仕事がうまくいっていない人が考えていることは、約8割が“妄想”です。この状態を打破するには、本当に考えるべき1%のことを見つけ、そのことに集中すること。そしてその他99%のことはよい意味で「考えないようにすること」が大切です。頭で考えてばかりいるのではなく、実際に行動に移せば、きっと今まで見たことのない景色が目の前に広がるはずです。(「はじめに」より)

第2章「考えないために覚えておきたい『ラクする』技術」から、いくつかのポイントをピックアップしてみましょう。

スマートフォンは「ひざの上」に置く

忙しいとき、複数の仕事を並行して進めることもあるはず。打ち合わせをしながらメールを書き、チャットをして…というように複数のことを同時に進められると、時間を効率的に使えているような気がして気持ちいいものでもあります。

しかし本来、人間の脳はマルチタスクをするようにはできていないもの。実際には、同時にいくつもの仕事をこなしているわけではなく、脳を細かく切り替えているのだそうです。だとすればマルチタスクだと生産性が下がり、情報を取捨選択する能力なども低下してしまうため、結局はひとつのことに集中してスピーディにこなしていくほうがよいということになるわけです。

そのため、資料を読むと決めたなら資料を読む。メールを書くなら、メール書きだけに集中する。会議では、もちろん会議に集中する。そのように目の前のことに集中し、それぞれのタスクをできるだけ早く終わらせて、次のタスクに取りかかることが大切なのだと著者。

スマホにLINEのメッセージが表示されたり、着信があったりすると、気になってつい反応してしまいがち。しかし、自分の時間を大切にしたいのなら、目の前の仕事に集中すべきだというのです。

また集中するためには、スマホを机の上に置かないのもひとつの方法。どうしても落ち着かないのであれば、ひざの上におくのもいいそうです。反応するのは、もちろん自分で決めた仕事が終わってから。気になるのなら、必然的に仕事を終わらせなければならないということ。ひとつひとつをスピーディかつていねいに片づけることが重要だというわけです。(77ページより)

1日1時間、「自分時間」を設ける

逆説的ではありますが、ラクをするためには、自分の時間を確保して邪魔が入らないようにするのも大切だといいます。たとえば、(電話営業の場合は別だとしても)ふいにかかってくる電話に「出ない」というのもひとつの方法だというのです。突然の電話には応じないと、あらかじめ決めておくという手段。

たとえば周囲の人に、「きょうの11〜12時は集中タイムなので、電話は取り次がず、折り返すと伝えてください」と、あらかじめ伝えておくということ。日ごろからがんばっているのであれば、周囲の人たちも、きっと理解してくれるといいます。

「自分宛に電話がかかってきたら、ひとまず出る」という人も少なくないでしょう。しかし、それはある意味で、相手の都合にばかり合わせていることになると著者は指摘します。でも問題は、自分の時間を取られていては、進めたい仕事が進まないということ。だからこそ、「この時間帯は自分のなかで絶対に譲れない時間だ」という信念を持って仕事に臨むことが大切。そうすれば、仕事は効率よく進むそうです。(80ページより)

会議は始まる前のシミュレーションが9割

現実的に、ラクすることが難しいのが会議。複数の人が集まるだけに、なかなかコントロールしづらいわけです。とはいえ、ここでも時間の使い方を工夫することでこれまで以上に効率よくラクに振る舞うことができるといいます。重要なのは、あらかじめ「こうなるな」という理想形をイメージしておくこと。そうすれば、ムダな時間を費やさずに済むというのです。

でも、実際にどうすればいいのでしょうか? 著者の場合は、会議の前に必ず「その会議がなにを目的に行われるのか」ということを確認するようにしているそうです。そして、ひとりで会議のシミュレーションをする。会議の結論を定め、「そこにどんな道筋で行けばいいのか」を考えるわけです。ここは、頭の使いどころなのだとか。

当然ですが、会議はスムーズに進むとは限りません。そこで、反対意見を言われた際の対応を、あらかじめ想定しておくことが重要だというのです。具体的には、突っ込まれそうな点をシミュレーションしておくと、うろたえずにすむといいます。

しかし、ここで終わりではなく、さらにその先まで考えることが大切。自分が通そうとしている企画が通過したら、次はどんなアクションをどのタイミングでとればムダが少なくて済むか、思いを巡らせてみるべきだということ。

将棋の世界に「三手の読み」という言葉があります。「読み」とは言葉通り、先々をイメージするとか、シミュレーションするという意味ですが、「三手の読み」とは、行って先ではなく、二手先、三手先まで考えるということ。自分が一手打つ前に、目の前のどの駒を動かしたら、相手がどういう反応をするか、その後自分は次にどう出るか、ということまで考えるのです。これは棋士にとって基本中の基本と言われています。

仕事もこれと同じです。何事もそうですが、こと多くの人が関わる会議では「三手の読み」で臨むと、経験上スムーズにいくことが多くあります。会議の前から会議は始まっていると思ったほうがいいでしょう。(90ページより)

加えて著者が、なにより会議の場面で大切だと思っているのは、早く終わらせることだといいます。会議は考える場ではなく、考えてきたことを報告し合い、次の行動を決定する場。つまり会議中に考えればいいと思っていると、会議はどんどん長引いてしまうわけです。もちろん、その間にはなにも生み出されません。

だからこそ、会議の前に「1分でも短く終わらせよう」ということを意識すると、会議前、会議後の展開が少しずつ変わってくるということ。そういう意味では、会議は実施前の準備がキモ。結果的にはそれが、ラクすることにつながるといいます。(87ページより)

「残業しない人」ブランディングで時間を作り出す

「○○さんは残業をしない人」だとまわりに思わせておくと、なにかとラクだといいます。そうすれば夕方以降、なにか急ぎで仕事が発生したとしても、頼まれる機会が少なくなるからだというのです。

「しかしそれでは、チャンスが減ってしまうかもしれない」、そう考えたとしても不思議ではないでしょう。たしかにそれは否定できないものの、無理して引き受けて遅くまで残ったからといって、成果を上げられるわけではない。著者はそういいます。周囲の評価が気になるのであれば、朝早く出社して企画をひとつでも多く考えたり、数字を上げるための策を練るなど、「遅くまで残業すること以外の方法」で活躍すればよいという発想。

「家に帰って何もすることがない」という人ほど、すすんで残業しがちです。ただ残業は怖いもので、一度習慣になってしまうと、なかなか抜け出せません。「何かやろう」と思い立ったときに実践しようとしても、すでに習慣になっているのでなかなかやめられないのです。(100ページより)

そこで著者は、残業しない理由をつくることを勧めています。「英会話に通う」「実家の仕事を手伝う」「友だちとボランティアをする」など、なんでもいいそうです。日々のそうした小さな工夫が、自分の時間を1秒、1分と長くすることにつながっていくというのです。(98ページより)

まずは手探りでも、一歩踏み出すことが大切だと著者はいいます。自分にとって大切なものを見つけ、それに集中できるようになれば、自然と仕事の効率も上がり、毎日を楽しく過ごせるようになるとわけです。そんな状態へ自分自身を導くためにも、本書を活用すべきかもしれません。なにより、“深く考えずに”読める気軽さが魅力です。

メディアジーン lifehacker
2017年8月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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