『人はなぜ太りやすいのか』 マイケル・L・パワー、ジェイ・シュルキン著

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人はなぜ太りやすいのか

『人はなぜ太りやすいのか』

著者
マイケル・L・パワー [著]/ジェイ・シュルキン [著]/山本太郎 [訳]
出版社
みすず書房
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784622085539
発売日
2017/07/19
価格
4,536円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『人はなぜ太りやすいのか』 マイケル・L・パワー、ジェイ・シュルキン著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 人間ドックで体重を3~5キロ減らすよう指導を受けた。直後に本書が目にとまり天の啓示を受けた気がして読み始めたが素晴らしい本だった。普通この手の本は食事や運動のコントロールを主軸に据えがちだが、本書が一味違うのは、ヒトの進化の歴史を丁寧に辿(たど)ってヒトの生物学(ヒューマンバイオロジー)を明らかにすることで、太りやすいという人体の生理のメカニズムを解き明かしたことだ。

 食物不足のサバンナで「ヒトは食糧獲得のため激しい労働をしなくてはならない種として進化してきた」ので、自然とエネルギー摂取効率が高まった。「しかし今はキャンディーに満ち溢(あふ)れた土地に暮らしている」。このミスマッチが肥満の流行をもたらした。

 もう一つの要因は、ヒトの乳児期の脳の成長を支えるため、より脂肪酸の含まれた母乳を出す女性、即(すなわ)ち脂肪の多い女性が選択されたという仮説だ。エネルギー過剰蓄積への歯止めが弱い身体を持つヒトが飽食の時代を迎えたらどうなるか。当然、肥満対策は一筋縄ではいかず、多層的・統合的である必要がある。目から鱗(うろこ)が落ちた。山本太郎訳。

 みすず書房、4200円

読売新聞
2017年8月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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