角田光代『源氏物語』を訳す

インタビュー

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源氏物語 上

『源氏物語 上』

著者
角田 光代 [訳]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784309728742
発売日
2017/09/11
価格
3,780円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

角田光代『源氏物語』を訳す

[文] 瀧井朝世(ライター)

角田光代
角田光代

──今回の新訳、とても面白く拝読しました。『源氏』に関しては有名なエピソードを知ってはいたものの、どうも学校の古文の授業の苦しさを思い出すことがあって、これまで敬遠していたんです。だから丁寧に読み込んだことはいちどもなかったのですが、今回、わかりやすくて、なおかつ親しみやすい訳で読めたことで、作品に対するイメージがかなり変わって驚きました。

角田 ありがとうございます。

──非常に長い作品でもあるので、相当大変な作業かと思います。角田さんが最初にこのお話をいただいたのはどれくらい前になりますか。

角田 たしか四年くらい前……二〇一三年の夏だったと思います。

──「こういう『日本文学全集』が出るんです。……で、角田さんにはこれをやってほしくて」というような?

角田 そうです、そうです。

──その依頼を受けたときはどう思われたんですか。

角田 正直、ちょっと嫌だなと思って(笑)。最初は「こういう巻立てです」というラインナップの一覧を貰ったんです。そうするとその中から選べるのかなとか思うじゃないですか。で、それを見たら、それぞれの巻の古典作品の訳者はほぼ誰かが決まっていて、選べないということがわかって。リストの中に自分が興味がある作品もあったのですが、「この作品はこの作家に決まっているのか……」「そして私は『源氏物語』なのか……」と思いました。

──あまり乗り気ではなかったわけですね。

角田 受けたのは、編者が池澤さんだから、ということが大きかったんです。他の作家の個人編集だったら「あまり興味ないので……」と断ったと思うんですけど、元々私が池澤夏樹さんを作家としてとても好きで。人生で一度だけ、サイン会に行ったことがあるんですけれど、それが池澤さんで。唯一、ご本人のサイン本を持っている作家さんなんです。その方に名指ししていただいて、はたしてお前は断れるのか、という気持ちが正直いちばん大きかったんです。

──一瞬ひるんだわけですね。

角田 はい。なぜなら『源氏』を好きな作家はとても多いと思うんです。でも、私自身は特別好きという気持ちを抱いたことはないんですよ。だからといって、嫌い、というわけでもなく。そもそも「嫌いだ」と思う根拠もないくらいに関わりがなかったんです。だから「どうしよう……」と。

 三年間かけて『源氏』をやってほしいと言われたんです。でもその三年間、小説はどうするのか、他の仕事はどうするのか、三年後どうなっているのかとか、そして「あの『源氏』……?」とか、三日くらい悩みに悩みまして。でもやっぱり最初に戻って、池澤夏樹さんのお名前が挙がったからには断れない、「引き受けます」と諦めにも似た気持ちでやらせていただくことになりました。

Web河出
2017年9月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河出書房新社

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