<東北の本棚>気仙沼大島と米軍の絆

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<東北の本棚>気仙沼大島と米軍の絆

[レビュアー] 河北新報

 在日米軍は東日本大震災の後「トモダチ作戦」の一環として、孤立した気仙沼市大島で大規模な救援活動をした。当時、沖縄に駐留する海兵隊の幹部として立案に携わった著者が活動の秘話や住民との交流に至る経緯を明かした。
 政治学博士の著者は大阪大准教授として米軍基地問題を研究。2009年に発足した民主党政権と米軍の懸け橋になろうと志し、海兵隊に転職して周囲を驚かせた。
 研究者時代から、米軍が人道支援のために自衛隊と共同展開する構想をまとめていた。「震災発生とほぼ同時に、同僚と対応策の検討に入った。救援作戦を調整する拠点は横田基地、東京・市ケ谷、仙台の3カ所に設けられた」と振り返る。
 船舶や船着き場が津波で流された大島に、幅広い有事に即応できる第31海兵部隊が派遣された。電源車、電力復旧に必要な作業車、給水車を送り、主力部隊はがれき撤去や港の復旧、島民の貴重品を探す作業に当たった。
 活動を終えると、著者らは島の小中学生を精神面で支えるため、沖縄の米軍基地に招くホームステイ事業を発案。米軍側も気仙沼市を再訪し、相互交流の輪を広げた。公式的な事業は軍幹部の交代や予算難のため打ち切られたが、著者ら有志と気仙沼市議、住民らとの付き合いはいまも続いている。災害派遣について「日本と米国の固い絆が私たちを突き動かした」と強調。人口流出に悩む大島への支援継続を誓う。
 著者は1968年米国生まれ。神戸大大学院法学研究科博士課程修了。2015年まで在沖縄海兵隊政務外交部次長を務めた。
 集英社03(3230)6080=605円。

河北新報
2017年9月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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