『とむらい師たち : 野坂昭如ベスト・コレクション』
- 著者
- 野坂, 昭如, 1930-2015
- 出版社
- 河出書房新社
- ISBN
- 9784309415376
- 価格
- 990円(税込)
書籍情報:openBD
野坂昭如はあまりに小説家だった
[レビュアー] 図書新聞
完全に打ちのめされた。生きること。死ぬこと。空腹をしのぐこと。性欲を吐き捨てること。そのようにして生きたり死んだりするほうが「普通」で、二〇一七年現在のほうが「異常」なのではないかと思えて仕方がない。野坂昭如というと、ある世代にとっては、ジブリ版『火垂るの墓』のイメージがほぼトラウマのようになって強すぎるし、そうでなければ大島渚(これもある世代にとっては「バカヤロー!」の人か)を殴った人という認識だろう。それも一面の事実だが、しかし野坂昭如はあまりに小説家だった。ある意味では、野坂昭如はずっと同じことを書いていて、その強度はもしかしたら中上健次をすらしのぐかもしれない。いままでまともに読んでこなかったことを後悔した。(6・20刊、二八二頁・本体九〇〇円・河出文庫)