『倍賞千恵子の現場』 倍賞千恵子著

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倍賞千恵子の現場

『倍賞千恵子の現場』

著者
倍賞千恵子 [著]
出版社
PHP研究所
ISBN
9784569836607
発売日
2017/07/15
価格
993円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『倍賞千恵子の現場』 倍賞千恵子著

[レビュアー] 橋本五郎(読売新聞社特別編集委員)

 拝啓 倍賞千恵子様

 ご本を拝見し、人間論、演劇論として心から共感を覚えました。「寅さん」の中でお好きだという、とらやの茶の間とさくらが寅さんと別れるシーンは私も大好きです。いつも笑いながら涙が出ます。さくらは何と心労が多いことか。でも何と幸せか。

 さくらには「こんなことをしてあげたのに」という「のに」がない女性と書いておられます。本当にそうですね。倍賞さんを山田監督は「無個性の個性」と評したそうですが、言い得て妙です。誰にも温かい無限抱擁性があります。

 渥美清さんを「石」に例えておられます。どんな渥美清論よりも本質を突いているように思います。山の上のゴツゴツした石が何年も何年もかけて麓に下りてくる。人前に出たときは四角いツルンとした石になり、触ってみたくなる……。それが渥美清だと。

 肺がんで亡くなったお母さんのおっぱいを吸って初めて母と娘になれたような気がすると書いておられます。お互いに仕事があったためですが、この哀切さが倍賞千恵子・さくらにあるから、私たちの心を打つのだと思います。

 PHP新書 920円

読売新聞
2017年9月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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