本を読むのが苦手な僕は こんなふうに本を読んできた 横尾忠則 著

レビュー

4
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

本を読むのが苦手な僕はこんなふうに本を読んできた

『本を読むのが苦手な僕はこんなふうに本を読んできた』

著者
横尾忠則 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784334039974
発売日
2017/07/19
価格
907円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

本を読むのが苦手な僕は こんなふうに本を読んできた 横尾忠則 著

[レビュアー] 荒俣宏(作家・博物学者)

◆にじみ出る人生、表現

 これは、読み上げた本に自身の「表現」と「人生」を絡ませた超書評だ。表現のほうは『完本 ジャコメッティ手帖(てちょう) 1』がすごい。よほど日本語離れした本なのか「マルデTwitterノヨウナメモ的ナ日記ヲ片仮名ト仏語デ語ル哲学者矢内原(以下Y)ハAlberto Giacomettiノモデルヲ5度ノ渡仏ヲ通シテ務メタ…」と書いていく。

 むろん、人生のほうは、さらに興味ぶかい。著者が何回もあったアンディ・ウォーホルに対しては、もはやウォーホル自身になり切って、「職業上の秘密」を暴露する。「ボクはアンディ・ウォーホル。芸術家になるために前歴のイラストレーターを闇に葬って、見事、芸術家になりすまして大成功した…」と、『アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし』なる絵本に触れつつ、「芸術って怖いだろ? まるでテロだよね」と結ぶ。

 藤田嗣治と横山大観が描いた戦争画に関する本の書評も秀逸だ。「愛国画家として再登場を」計ろうとして失敗した国際派の藤田と、戦闘場面でなく「国家戦略の象徴に富士山を」描き戦後も画壇に返り咲いた国粋派の大観とを比較。著者は最後に(涙)と書いて、自身を含めた画家の人生を述懐する。難しくて上から目線の書評を蹴散らし、自由奔放な読み方なのに、書評の本道を外していない。選ばれた本を全部買いたくなるからだ。

 (光文社新書・907円)

<よこお・ただのり> 1936年生まれ。美術家。著書『言葉を離れる』など。

◆もう1冊 

 丹羽宇一郎著『死ぬほど読書』(幻冬舎新書)。ビジネス界きっての読書家が伝える、本の与える豊かな力。

中日新聞 東京新聞
2017年9月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加