『キッズファイヤー・ドットコム』
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ITで子育てに革命を起こす男たち
[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)
少子高齢化だと何年騒いでいるだろう。本書は近未来小説と言えるだろうか。読み終わった後、誰もが「そんなバカな」とは言えない子育て小説だ。
新宿のホストクラブBLUE・BLOODの二代目店長、白鳥神威(かむい)はカリスマホストである。ある日仕事を終えて家に戻るとドアの前にベビーカーが置いてあった。中には男の子の赤ん坊と「神威さまへ よろしくお願いします」と書かれた紙が入っている。付き合った女は何人もいた。この子を育てることは運命が運んできた一つの試練だ。
しかし夜の仕事で男の職場。赤ん坊を育てる環境にはない。そこでかつての同僚で天才的なIT会社の経営者、三國孔明の知恵を借りることにした。彼の取った方法、それはクラウドファンディングだ。様々な理由で子どもを育てることが難しい親が《KIDS-FIRE.COM》を通じて不特定多数の人たちから金を集め、それを子育てに活用する。炎上商法が功を奏し、この試みは軌道に乗っていく。
後半はそれから6年後、2021年の物語だ。子どもは「歌夢威」と名付けられ「KJ(カムイジュニア)」と呼ばれている。生まれてからずっとストリーミングで人に見られる生活をしてきたKJは老成している。そこに9歳の天才記者、堀田真が、自身が主宰する〈キャッチャー・イン・ザ・トゥルース〉という媒体の取材でやってくる。彼らは意気投合し、新しい生き方を模索し始める。
日々更新されるITガジェットを使った世界は、いまや絵空事とは思えない。子育てに革命は起きるのか。この台詞が胸を打つ。「愛なしで子どもを育てることができたら、それはたぶん愛と見分けがつかない」