『OPTION B』 シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント著

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OPTION B

『OPTION B』

著者
シェリル・サンドバーグ [著]/アダム・グラント [著]/櫻井祐子 [訳]
出版社
日本経済新聞出版社
ISBN
9784532321598
発売日
2017/07/20
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『OPTION B』 シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

絶望から回復する歩み

 著者の一人、シェリル・サンドバーグはフェイスブックの最高執行責任者で、ベストセラーも書いている。言わば自他ともに認める世界的なスタープレーヤーだ。その彼女が、休暇先で突然夫を亡くし、絶望のどん底に突き落とされる。

 そのときに彼女が何を考え、次善の選択肢を意味するオプションBをいかに選び、レジリエンスと呼ぶ、折れない心、回復力をもつ心をいかに鍛えていったのかが、赤裸々に語られている。

 そんな著者なら、逆境にも力強く立ち向かい、手際よく乗り越えていったのではと思うかもしれない。しかし、現実はそれとは程遠く、悲嘆にくれ、仕事に復帰してもすべてに自信をなくしてしまう。

 そのつらい状況を、もう一人の著者である心理学者のアダム・グラントとともにいかに対処していったのか、そのレジリエンスを鍛えていく具体的なプロセスが語られている。

 たとえば、考えや気持ちを思いつくままに書き写すジャーナリングの経験が語られ、ネガティブな感情は曖昧にせず、むしろ「ひとりぼっちでさびしい」といった具体的な言葉にしたほうが感情を処理しやすい等(など)が説明される。

 また、周りの人間は、相手を傷つけてしまうのではと、つらい話題を避ける傾向があるが、むしろ積極的に話をしたほうが、本人にとってプラスだという。さらには、レジリエンスの強い子どもを育てるにはどうしたら良いかも、実際父親を急に亡くしたシェリルの子どもの経験を通して語られていて、この点は参考になる家庭も少なくないだろう。

 本書の内容に深みを与えているのは、著者の体験を主軸にしながらも、様々な困難に直面せざるを得なかった、かなり多くの人々の事例が紹介されている点だ。それによって、単なる個人の体験に留(とど)まらず、普遍的なメッセージをもつ内容になっている。多くの読者に勧めたい一冊だ。櫻井祐子訳。

 ◇Sheryl Sandberg=米財務省首席補佐官などを歴任◇Adam Grant=ペンシルベニア大ウォートン校教授。

 日本経済新聞出版社 1600円

読売新聞
2017年9月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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