『ウンベルト・エーコの小説講座』 ウンベルト・エーコ著

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ウンベルト・エーコの小説講座

『ウンベルト・エーコの小説講座』

著者
ウンベルト・エーコ [著]/和田 忠彦 [訳]/小久保 真理江 [訳]
出版社
筑摩書房
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784480836502
発売日
2017/07/25
価格
2,484円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ウンベルト・エーコの小説講座』 ウンベルト・エーコ著

[レビュアー] 尾崎真理子(読売新聞本社編集委員)

 昨年84歳で没したイタリアの記号学者にして世界的ベストセラー作家が、9年前に北米の大学で行った特別講義。

 本当に特別な、自身の創作手法をめぐる具体的な解説で、ここまで手の内を明かしていいの?と驚くが、それこそがエーコの自信の表れ。

 読書とは〈「読者の能力」(世界についての読者の知識)と「あるテクストが前提とする能力」とのあいだの複雑な取引なのです〉。読者に優しいわけではないのだ。

 それどころか、高尚なコード(記号体系)でエリートに知的ほのめかしを与えつつ、大衆がすぐ理解できる通俗的コードも使うという「二重のコード化」によって、代表作『薔薇(ばら)の名前』を書いたと、自分からも公言している。つまり批評家の指摘通り、エーコの作品は典型的なポストモダン小説であり、〈テクストとは、多様な解釈を引き出すための装置なのです〉。

 密度が高く、後半はこの作者の良い読者でないと難解だろう。しかし同時代の作家、ことに村上春樹の世界を深く読解したい読者には、かなり有効な参考書ともなりそうだ。和田忠彦・小久保真理江訳。

 筑摩書房、2300円

読売新聞
2017年9月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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