『世界を分断する『壁』』 アレクサンドラ・ノヴォスロフ、フランク・ネス著

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フォト・ドキュメント 世界を分断する「壁」

『フォト・ドキュメント 世界を分断する「壁」』

著者
アレクサンドラ・ノヴォスロフ [著]/フランク・ネス [著]/児玉しおり [訳]
出版社
原書房
ISBN
9784562054183
発売日
2017/06/23
価格
3,456円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『世界を分断する『壁』』 アレクサンドラ・ノヴォスロフ、フランク・ネス著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 トランプ大統領がメキシコ国境に壁を作ると言ったことはまだ人々の記憶に新しいが、実は壁は世界中に存在し今も作られ続けている。本書は世界9か所の壁の現場を歩いてルポした貴重な写真集だ。壁は機能面からは、領土紛争(イスラエルなど)、領土問題のない国家間(北アイルランドなど)、軍事紛争後(朝鮮、キプロス)、移民防止(メキシコなど)の四つに分類される。しかし、機能や理由はどうであれ壁やフェンスは家族や人々を分離し分断するものでしかなく、生に対する死の象徴として歴史上断罪されているのだ。

 冷戦終結前のベルリンやキプロスの首都ニコシアの壁を通り抜けた時の形容のしようのない戦慄(せんりつ)、怒り、悲しみが蘇(よみがえ)ってきた。例えば、パレスティナの壁を一瞥(いちべつ)するだけでも、壁がいかに非人道的なものかがよく分かるだろう。文章も抑制が効いていて心に残る。児玉しおり訳。

 原書房、3200円

読売新聞
2017年9月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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