<東北の本棚>会津の「長州嫌い」検証

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呪われた明治維新

『呪われた明治維新』

著者
星亮一 [著]
出版社
さくら舎
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784865810974
発売日
2017/04/05
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>会津の「長州嫌い」検証

[レビュアー] 河北新報

 会津人の長州嫌いは、今も続く。その理由を「明治政府の戊辰戦争後の非人道的扱いが、会津人の心を深く傷付けた」と著者は言う。怨念の元を検証した。
 戊辰戦争で薩長を中心とする新政府軍に攻め込まれた会津若松城下では、食料から家畜、鍋釜までが略奪され、女性が拉致された。戦利品の分捕り合戦はつきものだが、問題は「戦後処理にある」と言う。
 会津人を最も傷付けたのは「賊軍の死体には手をつけるな」と、新政府から厳しい命令が下されたことだった。焦土と化した若松の城下に千数百体の死体が放置され、野犬やカラスの餌食になった。死体の埋葬が許されたのは翌年春、雪解けを待たなければならなかった。異説もあるが、結果的に人々は半年の間、目の前に地獄絵図を見せつけられたのである。
 敗者となった会津武士は現在の青森県下北半島に流され、斗南藩となって再興を図るが、そこは極寒の地。コメは取れず、干したコンブをたたき、ヒエと一緒に煮込んで食べた。餓死者、病人が続出した。
 戦後処理を主導したのは長州藩出身の木戸孝允。会津藩が京都守護職をしていた時期、多くの同志を失った。自らも会津藩の検問で捕らえられ、危機一髪のところで逃亡した。時代が明治に代わっても木戸は会津に「怨念丸出し」であった。
 最後は長州嫌いの政治家伊東正義のエピソードを紹介し山口県(長州)出身を誇りとする安倍晋三首相までたどる。「会津と長州との和解」は、まだまだハードルが高そうだ。来年戊辰戦争150年を迎える。
 著者は1935年仙台市生まれ、郡山市在住。会津藩をテーマに据える歴史作家。
 さくら舎03(5211)6533=1620円。

河北新報
2017年9月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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