【対談】ビートたけし×又吉直樹 男と女は会った瞬間が一番いい〈『アナログ』刊行記念〉

対談・鼎談

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アナログ

『アナログ』

著者
ビートたけし, 1947-
出版社
新潮社
ISBN
9784103812227
価格
1,320円(税込)

書籍情報:openBD

男と女は会った瞬間が一番いい

[文] ビートたけし又吉直樹(お笑い芸人・作家)

たけしと又吉、恋愛を語る

又吉 でも僕、今日たけしさんに伺いたかったんですけど、これまでいろんな映画を撮られてきたじゃないですか。今なぜこのタイミングで、小説をもう一度書こうと思われたんですか?

たけし 実は最初、映画のプロットとして考えてたの。

又吉 あ、そうだったんですか。

たけし うん。俺の映画は暴力だけで「たけしは男と女を描けない」なんて言ってる野郎がいやがって。腹立ったんで男と女の話を撮ってやる! って書き始めたら純愛小説になっちゃった。恥ずかしい話、まともな恋愛なんてしたことないんだけど……これまで恋愛したのはソープランドくらいのもので、俺は会ったその日が恋愛ってタイプだから。

又吉 そうなんですか。

たけし いや俺はね、あのう、男と女っていうのはね、そのう、会った瞬間が一番いいんだと思ってるわけ。

又吉 ああ、なんか分かる気がします。

たけし うん。「あ、いいな」と思った時が一番その子を好きな瞬間で、その後の好きになっていく気持ちは妥協でしかないと思ってるの。本当はその場で押し倒したいんだけど、今の法律だと人間社会に悪影響があるんで、いろいろ奢ったりして罪を薄めているだけであって。

又吉 (笑)。

たけし 一回目で押し倒したら暴行になるけど、十日も付き合えば合意の上になって、一ヶ月したら恋愛って呼んでいいんだと思ってんの。

又吉 なるほど、恋愛と呼ぶまでには我慢が必要なんですね。

たけし でも我慢できるようになると、最初の出会いのようにどう補っていくかが問題なんだよ。相手にいいとこ見せようとか思い始めると、初めのテンションには敵わないという感じがするね。

又吉 でも今回の小説は、そのテンションが続いていく感じがありました。

たけし うん、だってセックスシーン書いてないもん。手も握ってない。『劇場』にも性的な描写ってないね。

又吉 もちろん二人の間にはそういうこともあるんでしょうけど、永田という主人公は他人に言わないやろうなって。最初にたけしさんが仰ったみたいに、恋人の沙希とか別の視点だったら、そういう話も出てきたかもしれないですけど。

たけし 男三人だと酔っ払って「あの女としたの?」とかくだらない下ネタも言わせるんだけど、いざ女性と二人きりになると何言わせればいいのか俺もわからないの(笑)。でもギャング映画たくさん撮ったから、男女の話をやってみたかったんだ。いろんなものに手を出すわりにはどれもダメなんだけどねえ。

又吉 いや、そんなこと(笑)。

たけし 俺、近代五種だったら優勝できると思ってるんだ。芸能っていう総合ではオリンピック候補になれるはずなんだけど、単発の競技だと順位に入ってこないんだよなあ。

新潮社 波
2017年10月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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