<東北の本棚>再建へ闘い写した240枚

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東日本大震災〝あの日〟そして6年

『東日本大震災〝あの日〟そして6年』

著者
倉又 光顕 [著]
出版社
彩流社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784779123115
発売日
2017/03/03
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>再建へ闘い写した240枚

[レビュアー] 河北新報

 東日本大震災による津波で大きな被害を受けた宮城、岩手両県沿岸部で暮らす被災者たちの歩みを、近影とともに数多くの写真を使って振り返った。
 フリーの写真家である著者が撮影を通して出会った人たちとの対話を基に、発生直後の状況を詳しく記録しながら、再建に向けた動きや亡くなった家族らに寄せる思いを書き止めた。
 東松島市大曲浜出身の伊藤健人さんは当時5歳の弟や母親ら家族4人を亡くした。弟や犠牲になった子どもたちを追悼しようと2011年5月、全国から青いこいのぼりを募るプロジェクトを始めた。風に揺られる多くのこいのぼりや伊藤さんが和太鼓を打ち鳴らす様子を撮った写真と、自宅跡から弟が大切にしていた青いこいのぼりが泥だらけになって出てきたエピソード、多くの友人と取り組んだプロジェクトに込めた思いを紹介している。
 大船渡市の永沢敬一郎さん(故人)は自宅近くの歩道橋で津波に襲われ、妻と共に奇跡的に一命を取り留めた。震災当時74歳だった永沢さんは家族のだんらんが何よりの楽しみだった。「親戚や嫁いだ娘たちが集まって笑える家をつくりたい」と12年5月、自宅の再建を果たした。がれきが多く残る震災1カ月後の自宅周辺の様子と夫婦で命拾いした歩道橋、完成後間もない新居などと、13年7月に亡くなった永沢さんの遺影も収めた。
 11年4月から撮影のため通い続けた被災地の中から、承諾を得た人物33組と小学校など3カ所を選んだ。収録した写真は約240枚。この間撮影した約3万枚から厳選した。
 著者は1947年新潟県生まれ。東京写真専門学校(現東京ビジュアルアーツ)商業写真科卒。主に風景やスポーツの撮影を手掛ける。「震災を風化させたくない。突然日常を奪われた人たちが闘い続ける姿を伝えたい」と語る。
 彩流社03(3234)5931=2160円。

河北新報
2017年10月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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