【児童書】『天女かあさん』ペク・ヒナ作、長谷川義史訳
[レビュアー] 横山由紀子
■リアルな粘土人形の実写絵本
仕事と子育てに奮闘する母親にとって、子供の急な病気は切実な問題。それは韓国でも同じだ。
ソウルで仕事中のお母さんのもとにある日、息子のホホが発熱で学校を早退したという知らせが入るが、なかなか職場を離れられない。誰かにホホのことを頼もうとかけた電話につながったのは、なんと天女。雨降りの空からファニーフェースの天女が舞い降りて、ホホに「きょうはわたしをかあさんとおもいなはれ」と告げるのだが…。
韓国で大人気の女性絵本作家が手作りした、リアルでユーモラスな粘土人形の実写絵本。高熱で真っ赤になった頬や鼻、ゆがんだ眉、潤んだ瞳など、人形の豊かな表情にくぎ付けになる。
韓国や日本で話題を呼んだ『天女銭湯』に続く天女シリーズの第2弾。今回も絵本作家の長谷川義史さんが翻訳を担当しており、天女のとぼけた大阪弁が何とも味わい深い。働くお母さんの思いに寄り添い、優しく包み込んでくれる一冊だ。(ブロンズ新社・1400円+税)
横山由紀子