これからの時代に「独学術」が重要である理由

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これからの時代に「独学術」が重要である理由

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

最強の独学術 自力であらゆる目標を達成する「勝利のバイブル」』(本山勝寛著、大和書房)の著者は本書の冒頭で、貧しい家庭に育ったことを明かしています。高校時代は親が家におらず、収入はゼロだったため毎日アルバイトを続けてきたのだとか。しかし自分の夢を叶えるため、「1年後に独学で東大に合格する」という決意を周囲に表明したのだそうです。

しかし塾や予備校に通う選択肢はなかったので、東大合格のために必要なプロセスを徹底的に分析し、戦略と計画を立てたのだといいます。すると合格への道筋がイメージできるようになり、1年後には独学での東大合格を実現したというのです。

極貧の家庭で育ち、成績もさほどよくなかった私が、1年間の独学で東大に現役合格できたのは、(中略)独学期間の1年間を通して試行錯誤するなかで、0を1に、1を2に積み上げていき、「独学の極意」をつかんだからです。(「プロローグ」より)

そのときにつかんだ「独学の極意」は、その後も勉強やビジネス、その他のあらゆることに応用できるものであり、夢を叶えるための究極の力になっているのだそうです。独学と聞くと受験や試験のための勉強のイメージがありますが、人生の幅と世界を広げるために教養的な学び、あるいは生涯を通じて夢を実現させるための長期的な学びも、独学で解決できるというのです。

だとすれば、その根拠や基本的な考え方を深く知りたいところでもあります。そこできょうは「なぜ、いま独学が重要なのか」を解説したPart 0「独学が最強である理由」に焦点を当ててみたいと思います。

独学に適した環境がこれほど整った時代はない

コミュニケーションが重要視される時代にあって、なぜ「独学」なのか? そう感じる人もいるでしょう。しかし時代が大きく変化しているからこそ、いま自らが独立して学ぶ力、すなわち「独学力」が求められているのだといいます。そして、そう主張する著者は、「現在は、いつでもどこでも無料で良質な授業を受けられる」ことにも注目しています。

インターネットには、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)など世界のトップレベルの大学の授業がたくさん無料で公開されています。自らの学ぶ意志さえあれば、いますぐにでもハーバードの授業を聴講することができるのです。(19ページより)

つまり学校に行かなくても、高いお金を払って塾や予備校に行かなくても、わかりやすい良質な授業を、いつでもどこでも受けられる時代が実現しようとしているということ。独学に適した環境は、今後さらに発展し、ますます整っていくはず。そんな時代だからこそ、自分自身がいかに学ぶかということが、より試されることになるというのです。(18ページより)

勉強にもビジネスにも効果抜群の「最強の独学術」とは

著者が本書で説く「最強の独学術」は、勉強だけでなく、ビジネスの成果にも効いてくるような独学力を指しているといいます。社会人になると、学校で教わる機会はほとんどなくなるもの。OJT(オンザジョブトレーニング)、あるいは上司や先輩から教えてもらうことはあるでしょうが、新しい分野や業界のことを自ら学び、習得しなければならないことが多いのも事実。つまりそんなときこそ、身につけていた独学力が効いてくるというわけです。

どんな分野に対しても「ドキドキワクワク」するような知的興奮を見出し、いつでもどこでもすぐに自分で動いて学びを実践し、時代とともに変化していくような複雑な問題に対して自らが絶えず考え抜いて対応していく。そんな独学力こそが、あらゆるビジネスにおいても成果を出すための力になるでしょう。(31ページより)

著者は過去の著書『16倍速勉強法』と『16倍速仕事術』において、「勉強の成果も仕事の成果も、地頭×戦略×時間×効率」という方程式で表せるのではないかという仮説に基づき、それぞれの要素を2倍にすることができれば16倍の成果を発揮できると説いたのだそうです。

そして本書で紹介している「最強の独学術」とは、まさにこの4つの要素を自らが伸ばせるようになるための実践法なのだといいます。

論理的思考力や数値的な分析力、表現力などの「地頭」をよくし、先生や会社が教えてくれなくとも自らが有効な「戦略」を立てられるようにし、「効率」的な勉強や仕事の仕方を工夫できるようになり、勉強でも仕事でも物事に継続的に取り組む実践「時間」を確保するコツをつかむ。その結果、「地頭」「戦略」「効率」「時間」の4要素が自然と伸び、それらが掛け合わされることで、勉強においてもビジネスにおいても力が伸びていくということ。(30ページより)

<短期的独学=独学1.0>で、目の前の試験を難なく乗り越える

受験や資格試験、語学習得、留学など、「いますぐ達成したい短期の目標」を持っている人のなかには、塾や予備校、英会話スクールなどを利用する方も多いことでしょう。もちろんお金と時間に余裕があり、独学力をまだ身につけていない人であれば、それもひとつの選択肢ではあります。

しかしこれからの時代は、そういった外部サービスに頼ることなく、どんなことでも、いつでもどこでもすぐに、しかもほとんどお金をかけず、独学で学ぶ環境が整っているのだと著者は指摘しています。それどころか、自らが主体的に、自分に合った学習スタイルを実践できる独学のほうが、塾よりもずっと効果的だというのです。

定めた目標期日までに、受験も合格し、資格も取得し、語学試験も目標数値を達成し、留学も達成可能に。そんな独学法を、著者は<独学1.0>と命名しています。(37ページより)

<中期的独学=独学2.0>で教養を楽しく極める

勉強の具体的な目標を独学で達成できれば、相応の満足感は得られるでしょう。しかし、これからの時代の変化に対応するためには、それだけでは不十分。短期間ではすぐ目に見える効果が出なかったとしても、広い意味での学び、いわゆる「教養」を深めて人生の幅を広げるという行為が、人生において非常に重要なファクターになるという考え方です。

教養を深める行為とは、読書やさまざまな経験、自分の仕事や専門とは異なる分野からの気づきやインスピレーション、文章や創作によるアウトプットなどを指すもの。いいかえれば、5年後、10年後に花を咲かせるための種まき=投資としての中期的な学びだということです。これこそが、塾や予備校では教えてくれない、「独学でしか実践できない学び」だといいます。

ハーバードなど欧米の名門大学では、こうした中期的に効いてくるリベラルアーツ教育を重要視して実践しているのだといいます。中期で重要になる教養を広げて深める学びを実践しているということです。

「教養」という言葉はどこか堅苦しくもありますが、新しい時代にあった学びのスタイル取り入れて実践することで、より楽しく、より効果的に、そして長きにわたって継続させることができるのだそうです。特に重要なのは、インターネットなどの情報技術も駆使し、その特徴である双方向性も最大限に活用すること。そこで著者は、中期的スパンで教養を深め、人生の幅を広げるこの中期的独学を、「Web2.0」をもじって<独学2.0>と表現しています。(38ページより)

著者によれば最後の<独学3.0>とは、短期間で集中して目標達成する<独学1.0>と、中期的に教養を深め人生の幅を広げる<独学2.0>とをベストなかたちで組み合わせて実践する手法。これからも日々変化していく未来の社会に対してもしっかりと対応し、長期的戦略と継続的な取り組みを通じ、夢を叶えるための独学法なのだといいます。

多くの人は、「大学受験が終わったら嫌な勉強は終わり」といったように近視眼的な短期目標しか見えていなかったり、逆に「将来の夢は世界に出て活躍することだ」と大きな夢を描きながらも、目の前の語学や専門性の取得などがおろそかになりがち。しかし、短期の戦略・戦術と中長期のビジョン・戦略を一致させたうえで自らが独立して学び続けることで、確実に夢を叶えることができるのだそうです。

このことを著者は、「他人から押しつけられたノルマとしてではなく、自らがドキドキワクワクを極めながら学ぶことで、一生学び続けられる自家発電の無限のエンジンを自分のなかに持つことができます」と表現しています。

どんな環境でも、どんな条件でも、短期戦でも長期戦でも、自力であらゆる目標を達成し続け、必ず勝利へとたどり着く力を自分のなかに持てるからこそ、最強なのです。(40ページより)

だからこそ、必ず目標達成する<独学1.0>、人生の幅と世界を広げる<独学2.0>、そして、どんな変化にも対応し夢を叶える<独学3.0>を実践する「最強の独学術」こそ、新しい時代の“独学のバイブル”なのだと著者は主張しているわけです。(40ページより)

このような基本をスタートラインとして、以後の章では「目標を達成するための独学法」「インターネットやITの発展によって実践可能になった独学術」「長期的な取り組みを通して夢を叶えるために独学法」などが紹介されています。独学を通じて目標を達成したい人は、大切なことを身につけられそうです。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2017年10月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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