<東北の本棚>勝つための心構え継承

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

血を繋げる。

『血を繋げる。』

著者
鈴木 満 [著]
出版社
幻冬舎
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784344031265
発売日
2017/06/08
価格
1,430円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>勝つための心構え継承

[レビュアー] 河北新報

 「プロサッカークラブには、それぞれ『人格』がある」と著者は言う。人格があやふやだと、クラブ独自の文化は創れない。チームは生きものなので血が通っている。組織に脈打つ血をしっかり繋(つな)げていくことが、「人格」形成の鍵を握ると説く。
 著者はサッカーJ1鹿島アントラーズの常務取締役強化部長。20年以上にわたり、強化責任者を務めてきた。鹿島はJリーグ、天皇杯など主要3大会で通算19冠を重ねている。鹿島はなぜ勝負強いのか。その秘密を、当事者自らが明かしたのが本書だ。
 鹿島の血の源流は、クラブの礎を築いたジーコにある。プロはこうあるべきだという思想を、フロント、指導陣、選手に植え付けた。クラブに関わる全ての人が勝利にこだわり結束する「ジーコ・スピリット」の継承によって、鹿島の文化は醸成されてきたという。血を繋げていくことが、強化責任者の最大の仕事だったと振り返る。
 監督の指導方針にかかわらず戦い方の方向性を明確にすること、監督と選手の信頼関係が最も大切なこと、監督にも鹿島の文化を守ってもらうことなど、チームづくりをどう進めてきたかにも詳しく触れる。
 鹿島がブラジル人を重用する理由についても解説。草創期からブラジル人の力を借りてきたため、多くのスタッフがポルトガル語を話し、ブラジル人の考え方、生活習慣を理解しているのだという。戦力は厚過ぎても薄過ぎてもいけないこと、人材を集めるための工夫なども述べる。組織マネジメント論としても興味深い。
 著者は1957年生まれ、仙台市出身。鹿島の前身・住友金属工業の選手、監督を経て、鹿島のヘッドコーチなども務めた。
 幻冬舎03(5411)6222=1404円。

河北新報
2017年10月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク