『あの会社はこうして潰れた』
- 著者
- 帝国データバンク情報部藤森徹 [著]
- 出版社
- 日本経済新聞出版社
- ISBN
- 9784532263379
- 発売日
- 2017/04/11
- 価格
- 935円(税込)
明日は我が身か?失敗体験にこそ学べ
[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)
人の不幸は蜜の味、という言葉があるように日本人は成功者が転落していく話や、失敗談が昔から大好きである。古くは平家物語。盛者必衰の理をあらわす。自分とは全く関係のない会社の話でも、「老舗の企業が倒産した」というニュースを聞いたら、どうして潰れてしまったのだろう? と気になる人も多いはずだ。そんな野次馬的な需要を受けてか「帝国データバンク」の記者が、倒産レポートをコラム形式でまとめた新書『あの会社はこうして潰れた』がヒットしている。4月に発売され1カ月半で10万部を突破。現在は9刷で12万5000部まで発行部数を伸ばしている。
2010年以降7年連続で企業の倒産件数は減少しており「危ない会社」が潰れない「無倒産時代」が続いている。とはいえ2016年には8164件の企業が倒産している。倒産は突然やってくる。明日は我が身という可能性もゼロではないだろう。本書を読めば、企業が潰れる前の予兆の見極め方や倒産を予測するには何が必要か、といったことがわかるだろう。
倒産の原因には様々なものがある。老舗企業に多いのは、外部環境や嗜好の変化に対応できず、売り上げが低迷するパターンだ。100年、200年といった歴史のある会社でも、経営、商品は絶えず変化させないと生き残れない時代になっている。
また有名な会社が突然潰れるパターンでは、社員の不正や不正会計の発覚、財テクの失敗、詐欺に巻き込まれるなどの原因である場合が多い。本業とは関係がない複数の業種に手を出しはじめるのも危険な兆候だ。急成長企業の場合だと、過剰投資により資金繰りが立ち行かなくなるパターンも目立つ。そして倒産した全ての企業に共通しているのは信用を失ったということだ。信用は積み上げるのには時間がかかるが、失うのは一瞬である。
優れたビジネス書には成功体験ではなく、失敗体験が書いてあるものだ。成功体験は簡単に真似することはできない。しかし失敗体験ならば、参考にして、リスクを回避することができるからだ。倒産という多くの失敗体験が載っている本書はリスク回避のケーススタディとして大いに活用できるだろう。