『花咲舞が黙ってない』 池井戸潤著

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花咲舞が黙ってない

『花咲舞が黙ってない』

著者
池井戸潤 [著]
出版社
中央公論新社
ISBN
9784122064492
発売日
2017/09/05
価格
799円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『花咲舞が黙ってない』 池井戸潤著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

 同名のテレビドラマが放送されていたから、読み進めていくと演じた俳優陣の顔が浮かぶ人も多いかもしれない。

 臨店指導という、いわゆる不祥事をチェックする部署に所属する主人公は、銀行内で起きる様々なトラブルに直面する。

 臨場感のある展開により、お金を扱う銀行では、こんな問題が起きるのかと実感できる。それとともに、どこの組織も同じようなトラブルを抱えているなと感じる読者も少なくないだろう。

 興味深いのは、ちょうど銀行が合併しメガバンクが誕生する時期が舞台になっている点だ。ライバル行と合併することがいかに難しいことか。

 同じ地域に二つの支店があれば、経費削減のため、どちらかしか生き残れない。全体のことは考えず、とにかくライバルに負けるな、うちの銀行の支店を残せと血眼になる銀行員の姿は印象的だ。

 しかし、これを昔の出来事と片付けることはできない。銀行の合併が今後起きることも十分あり得る。そう考えると過去のある時期を舞台にした小説だが、現在にも大きなメッセージを投げかけている。

 中公文庫 740円

読売新聞
2017年10月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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