『拡大自殺 大量殺人・自爆テロ・無理心中』 片田珠美著

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拡大自殺 大量殺人・自爆テロ・無理心中

『拡大自殺 大量殺人・自爆テロ・無理心中』

著者
片田 珠美 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784041051658
発売日
2017/08/26
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『拡大自殺 大量殺人・自爆テロ・無理心中』 片田珠美著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 「拡大自殺」とは、自殺者が様々な動機で周囲の他者を道連れにすることだ。精神医学の世界では目新しい概念ではなく、たとえば病苦や経済苦による無理心中のケースを思い浮かべれば、私たち一般人にもすぐ腑(ふ)に落ちる。

 しかし現代社会で発生する拡大自殺には、心を痛めるよりも、その凶悪さに震撼(しんかん)するタイプのものもあるのだ。自爆テロや通り魔などの無差別大量殺傷事件である。文字通り自分の命と引き換えに特定のイデオロギーを訴えて社会を破壊しようとする自爆テロはもちろん、犯行後の犯人がしばしば無造作に「誰でもいいから人を殺せば死刑になると思った」「さっさと死刑にしてほしい」と言い放つ無差別殺人も、実は大がかりな自殺なのである。

 この種の拡大自殺を引き起こす個人の心の底には、社会に対する激しい怒りと復讐(ふくしゅう)心がある。それを生み出すのは現状の挫折と未来への絶望だ。近年の実例をいくつも挙げつつ、本書はそのメカニズムを精緻(せいち)に解析してゆく。読み進むほどに恐ろしく、この心性(しんせい)は意外と他人事(ひとごと)ではないと気づけば慄然(りつぜん)としてしまう。

 角川選書 1700円

読売新聞
2017年10月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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