ルナールの読みやすさ、語りにくさ

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にんじん

『にんじん』

著者
Renard, Jules [著]/窪田 般弥 [訳]
出版社
角川書店
ISBN
9784042214014
価格
514円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

ルナールの読みやすさ、語りにくさ

[レビュアー] 図書新聞

 ゾラ、モーパッサンらの自然主義文学、マラルメ、ユイスマンスらの象徴主義文学と同時期に活動したフランス作家、ルナール。戦前は岸田國士などによって紹介されてきたものの、現在ではあまり語られていない。というのも、ルナールの文学はその両派とも違っているからだ。だが、ルナールは自然主義でも象徴主義でもない「日常」を鋭く、かつユニークに描いた。エピソードは断片的で文章もかなり省略されているものの、どういうわけか皆にいじめられながらも冷静さを保ってその日その日をやり過ごす「にんじん」の姿が“ぼんやり”と浮かび上がってくる。小気味よい会話文も、劇作家としても著名だったルナールならではだ。何度も何度もその文章を読んでいくことで、味わいが出てくるのだ。(中条省平訳、4・20刊、三二〇頁・本体七六〇円・光文社古典新訳文庫)

図書新聞
2017年9月23日号(3320号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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