明文堂書店石川松任店「殺される未来を知った青年の片思いの行方は?」【書店員レビュー】

レビュー

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僕が殺された未来

『僕が殺された未来』

著者
春畑 行成 [著]
出版社
宝島社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784800275653
発売日
2017/08/07
価格
704円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

明文堂書店石川松任店「殺される未来を知った青年の片思いの行方は?」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

 大学のミスキャンパスで優勝した高嶺の花である小田美沙希に片思いしている大学生の《僕》は、友人の須藤健太郎とともに彼女の仲の良い後輩から彼女の行方が分からなくなったことを聞かされる。美沙希の身を案じる《僕》のもとに六十年後の未来から訪れたという十五歳の少女大塚ハナが現れる。謎めいた少女ハナは美沙希の誘拐事件に巻き込まれ殺された《僕》を救うために未来からきたことを告げる。同じく事件によって殺される運命にある美沙希を助けるために、少女からは行動を止められたものの、《僕》は未来からの情報を頼りに事件を追い始める。

 本書は第13回『このミステリーがすごい!』大賞の応募作品「未来人がきた!」を改題・加筆修正して出版された作品です(『このミステリーがすごい!』大賞はHP上で選考委員による講評・選評が一般公開されています。これ結構、他人の小説に対する考え方とかが分かって面白いです)。失礼を承知で嫌な言い方をすれば《落選作》なのですが、決して劣った作品とは思わず、私はこの作品が好きだと自信を持って言えます(こういう作品に弱い人間だということは否定しませんが……)。好感を持って読み進められる、疾走感のあるエンターテイメントです。善良さがかいま見えるユーモラスな文章も好きです。SF的な問題点を掘り下げていく話ではないので、その部分で引っ掛かる人はいるかもしれませんが、すこし不思議な恋愛ミステリとしてはとても愉しいものになっています。

トーハン e-hon
2017年8月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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