明文堂書店石川松任店「ミステリという表現形式でしか描き得ない戦争」【書店員レビュー】

レビュー

5
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いくさの底

『いくさの底』

著者
古処 誠二 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041061756
発売日
2017/08/08
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

明文堂書店石川松任店「ミステリという表現形式でしか描き得ない戦争」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

 ビルマ戡定がなったビルマのヤムオイ村を訪れた賀川警備隊。警備隊に同行する通訳の依井は、駐屯中の村で、賀川少尉が一刀のもとに斬り殺されるという殺人事件に直面することになる。ということで本書は戦時中のビルマを舞台にした戦争ミステリなのですが、戦争を舞台にしたミステリという表現では物足りない、ミステリという表現形式でしか描き得ない戦争といった表現が似合う一冊です。

《誰が、殺したのか?》よりも、《何故、殺したのか?》という部分に重点を置いた作品であり、殺人者の告白によって明かされる動機は読者に強い衝撃を与えます(ちなみに《何故、やったのか?》という動機の問題を重視した作品のことを、《ホワイダニット》と言います。東野圭吾『悪意』などが有名ですね)。内容の重厚さと、心にずしりと来るような読後感が魅力的な一冊です。登場人物の行動と感情を強く含まない淡々とした文章が読者の価値観を揺さぶる作品です。

2017年8月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
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