明文堂書店石川松任店「《抵抗》を喪った国の《抵抗》を描く衝撃作!」【書店員レビュー】

レビュー

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R帝国

『R帝国』

著者
中村文則 [著]
出版社
中央公論新社
ISBN
9784120050008
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

明文堂書店石川松任店「《抵抗》を喪った国の《抵抗》を描く衝撃作!」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

《「抵抗は、反抗とか反発、革命よりは弱いけど、何か大きいものに対して、自分なりに反対の意志をもって、ささやかでもいいからもがくこと。抗うこと。……反抗や反発だと、敵対するみたいで勇気がいるし、言葉の強さにたじろぐけど、……抵抗ならみんなもできるかもしれない」》

 人工知能が搭載された携帯電話《HP》(Human Phone)が一般的に用いられ、国内の辞書に《抵抗》という言葉が載らない。本書はそんな独裁国家《R帝国》を舞台に、その国で生きる様々な人々の姿を描いた一冊です。

 カフカの『変身』のような冒頭に、ジョージ・オーウェル『一九八四年』みたいな内容紹介(いわゆるディストピア小説などと言われるものですね。この辺の知識に詳しいわけではないので、細かい説明までできませんが……)、明らかに現実社会の様々な事柄に呼応していると思われる架空の名称(逆に作中では《日本》が架空の国として登場する)。個人的な好みの問題もあり、正直に言えば気乗りしないまま読み始めました。しかし一歩間違えれば強い非難を受けやすい本書を支える力強い言葉(心情的に受け入れられない部分もありましたが……)に、拒絶できない魅力を感じました。99%の絶望の中で1%の希望を信じてもがく、その意味、尊さをこの人は知っているのだという安心感に満ちた気高い物語です。

トーハン e-hon
2017年9月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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