明文堂書店石川松任店「深い考察に裏打ちされた、激しくも壮大なドラマ!」【書店員レビュー】

レビュー

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Ank : a mirroring ape

『Ank : a mirroring ape』

著者
佐藤, 究, 1977-
出版社
講談社
ISBN
9784062207133
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

明文堂書店石川松任店「深い考察に裏打ちされた、激しくも壮大なドラマ!」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

《おまえの姿を見た者がまだ生きているのなら、//おまえの話はすべて嘘、//まだ死んでいないのなら、//おまえの姿を見たはずはない、//もう死んでいるのなら、//見たものを話すことなどできない。》

 2026年、近未来の京都。霊長類研究者の鈴木望と科学雑誌のサイエンスライターをしているケイティ・メレンデスの二人。そして二人の人生に深く関わるダニエル・キュイ。世界的な影響力を持つ元AI研究者でありながらAI分野を見限り、霊長類研究に移った伝説の研究者である。この三人を軸に、登場人物たちの現在と過去を行ったり来たりさせながら、物語は断片的に明かされていく京都暴動へと向かっていく。一頭のチンパンジーと暴徒と化した人々。そこで何が起こったのか?

 ……ということで血と暴力に覆われた激しくも壮大なドラマは、やがて戦慄を伴った衝撃の結末を迎える。そして最後の光景に強く心を揺さぶられました。深い考察に裏打ちされた、とても広い視野を持った物語です。場所や時間がめまぐるしく変わり、知識や情報に溢れた本書は決してとっつきやすい作品とは言えない(読みにくいというわけではない)かもしれません。しかしそれを拒絶してなお(いやその拒絶があるからこそ)輝く本書を、もっと多くの人に読まれて欲しいと心から思います。

2017年9月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
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