明文堂書店石川松任店「彼らの明日なき暴走が止まらない!?」【書店員レビュー】

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明文堂書店石川松任店「彼らの明日なき暴走が止まらない!?」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

 繰り返される若者たちの行き過ぎた行為(すこし違和感の覚える)から始まり、Twitterに職場や家族への憎悪を垂れ流し続ける美容師の青年が殺人鬼へと変貌していく姿が描かれ、舎弟を使ってやらせを行うテレビ局の下請け制作会社のディレクターが登場する。舎弟を襲った美容師を追うディレクターの物語は意外な展開を見せ……、

 ということで本書は、技巧的なミステリの枠組みの中に現代社会が持つ《歪み》を大胆に取り込んだ一冊です。清々しいほど感情移入できる人物がいない(良い意味で、嫌いだ、と断言できる人物が多い)ことが、さらにその《歪み》を強めています。そんな不愉快さを伴った魅力的な物語は、呆然とするような結末へと向かっていきます。驚きの先にある人間(登場人物)の感情に、衝撃とともに強い恐怖を覚えました。ディレクターの長谷見が番組で担当していたコーナーの名前は「明日なき暴走」ですが、この言葉が物語全体を覆っているような印象を覚えました。

トーハン e-hon
2017年9月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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