まずは「5回だけ呼吸」を。マインドフルネスを取り入れた出勤前のストレス解消法

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脳がクリアになるマインドフルネス仕事術

『脳がクリアになるマインドフルネス仕事術』

著者
川野 泰周 [著]/柳内 啓司 [著]
出版社
クロスメディア・パブリッシング
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784295401230
発売日
2017/09/16
価格
1,518円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

まずは「5回だけ呼吸」を。マインドフルネスを取り入れた出勤前のストレス解消法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

マインドフルネスは、ストレスや疲労を取り払い、脳をクリアにしてくれます。

いかに優秀な人であっても、ストレスや精神的・肉体的な疲労からは逃れられません。日々の仕事の中で、自分では気づかぬうちに蓄積されていく多大な負荷が、集中力や判断力を鈍らせ、円滑なコミュニケーションを阻害し、どんどんパフォーマンスを低下させていきます。しかし、これを取り払い、脳をクリアにすることができれば、あなたのパフォーマンスは大いに向上するはずです。

またマインドフルネスには、集中力や判断力の強化・クリエイティビティの増大・共感性の向上・対人関係の改善など、多岐にわたる効果があることも科学的に証明されています。いずれもビジネスパーソンにとって嬉しいものばかりです。(「はじめに」より)

マインドフルネスについてこう説明しているのは、『脳がクリアになるマインドフルネス仕事術』(川野泰周著、柳内啓司編著、クロスメディア・パブリッシング)の編著者。現代における新しい働き方を発信する事業を手掛けているという人物です。

そんな立場に基づき、禅僧であり精神科医でもある著者の川野泰周氏とタッグを組んで生み出した本書は、「ビジネスパーソンのためのマインドフルネス入門書」

川野氏の専門性を軸に、精神医学や睡眠医学の観点、マインドフルネスの原点である前のエッセンスを絡めつつ、ビジネスパーソンが実践しやすいマインドフルネスのあり方を提案しているのです。

きょうは第2章「仕事のストレスをなくす14のメソッド」のなかから、出勤前のストレス解消法をご紹介したいと思います。

寝起きの頭がスッキリしないときは

朝に弱く、ようやく目覚めても眠気が取れていなくて気が滅入ってしまう…。だらだら身支度をしているうちに出社時間が近づき、慌てて家を飛び出すことに。そんな悩みを抱えている方も少なくないでしょう。その対処法として、寝ている間に休息モードになっている脳を、活動モードに切り替えることが大切なのだと著者は主張します。

軽いストレッチやヨガなどもいいそうですが、起き抜けはなかなか体が動かないもの。そこで、はじめに呼吸瞑想をするといいのだといいます。たった5回、呼吸に意識を向けるだけで、脳がクリアになってシャキッとしてくるというのです。なぜなら、瞑想には自律神経を整える作用があるから。休息モードでは副交感神経が完全に優位になっていますが、それを呼吸によってちょうどよい状態に戻すことで、脳の血液の循環が保たれ、すぐに動き出せるようになるということ。

呼吸を整えるだけで、十分に自律神経を整える効果があるそうです。特に低血圧で朝に弱いタイプの人は呼吸が早くなっている可能性が高いため、ゆっくり呼吸することがとても有効。また、呼吸に意識を向けると「注意力を呼吸に持っていけ!」という指令が脳から出され、さらに自律神経が整うという効果も。

具体的なやり方としては、まずゆらゆらと左右に軽く体を揺すり、安定するポイントを見つけたらそこで止めて、背筋を伸ばします。これを「左右揺振(さゆうようしん)」と言い、寝ている間に凝り固まっていた姿勢を伸ばし、一日動いていくための軸を作ってくれます。

それから、5回だけ、息を吸って吐きます。深く吸おう、長く吐こうなどとコントロールしようとせずに、ありのままに呼吸を感じることが大切です。お腹がふくらんでいる状態や、鼻の穴を膨らませる空気の流れに意識を向けましょう。

5回が無理ならば3回でも構いません。(62ページより)

加えて著者は、「カーテンを開けて光を浴びること」の重要性を強調しています。その理由は、日光で目に刺激を与えると、睡眠ホルモンであるメラトニンが抑制され、覚醒ホルモンのオレキシンが分泌されるから。とはいえ、太陽をじかに見るのはもちろんNG。日の光の入る部屋で少しの間過ごし、明るさに目を慣らしていくだけで十分に効果が得られるのだといいます。

太陽の明るさを体感しながら呼吸に注意を向けることが、寝起きの頭をシャキッとさせるための呼吸瞑想なのだそうです。光が十分に差し込む場所で行うことで、「光」「明るさ」「朝」といった感覚を改めて意識することができ、気持ちもリセットされていくということ。

些細なことのようにも思えますが、日当たりが与える心身への影響はとても大きいのだと著者。事実、うつ病の方を治療する際、場合によっては「なるべく日当たりのよい部屋に引っ越すように」とアドバイスすることもあるのだといいます。

ちなみに太陽光は、曇りの日だったとしても5000ルクス(明るさを表す単位)以上あるもの。雨の日でも3000ルクス程度あって効果は十分なので、天気がよくない日も必ずカーテンを開けるようにすることが大切なのだそうです。(59ページより)

朝の日光を浴びると睡眠の質も変わる

朝の日光には、睡眠の質を高める効果も。睡眠ホルモンであるメラトニンは、個人差こそあるものの、抑制されてからおよそ15時間後に自動的に再分泌されるようになっているのだそうです。夜、いかにリラックスしようとしても、無理にメラトニンを出すことは不可能。つまり、夜眠くなる時間は、当日の朝に決められているということ

朝7時に日光を浴びたとしましょう。人によっては1〜2時間のバラつきはあるものの、おおよそ15時間後の22時からだんだん眠気が襲ってきます。しかし、実際に眠れるのは0時か1時かもしれません。このように自然な睡眠リズムに逆らって眠ってしまうと、眠りが浅くなり、睡眠の質が下がってしまいます。(65ページより)

良質な睡眠をとるためにも、朝の日光を浴びることは必須条件だというわけです。(64ページより)

歯を磨きながら瞑想する

ちょっと意外な気もしますが、朝の身支度をしながら行える瞑想もあるのだといいます。しかも簡単なことで、普段行なっているひとつひとつの動作に意識を向け、集中すればいいだけ。

たとえば著者は、歯磨きしているときに瞑想することをオススメしているそうです。日ごろ、テレビやスマートフォンを見たり、考えごとをしながら歯を磨く方も少なくないはず。そのうち半分の時間を、歯磨きだけに意識を向けるようにしてみる。口の中で、歯ブラシが当たっている感覚に集中するということです。

これは、「服を着替える」「お茶を飲む」などの動作でも応用が可能。「いま、ここでやっている動作」に集中することも、ひとつの大切な瞑想法だという考え方なのです。(65ページより)

ヨガのポーズを取り入れる

呼吸瞑想と同様に、思い切り体にスイッチが入る方法として、著者はヨガを勧めています。なぜならヨガは、禅と並ぶマインドフルネスの原点のひとつだから。呼吸瞑想の後にやると効果も高まるそうです。

ここで紹介されているのは、「バンザイのポーズ」。もともとはもっと複雑なプログラムだったものを、誰でも簡単にできるように著者がアレンジしたものなのだといいます。

1. 足を肩幅に開き、鼻から息を吸いながらバンザイをして、心地よい程度に体を伸ばします。鼻からが難しければ口からでもかまいません。

2. 息を吐きながら膝を曲げ、上半身を前に倒して体を深く折り曲げます。再び3回ほど深呼吸をし、息を吸いながら上半身を起こします。

(67ページより)

ただ体を伸ばしたり縮めたりしているだけなので、たしかにこれなら簡単にできそうです。ちなみに、何度か繰り返して行うとよいそうです。

そしてもうひとつ、「太陽礼拝」というポーズも紹介されています。もとになっているのは、インドでヒンドゥー教の信者たちが太陽の神様を礼拝するときのポーズ。そのため、朝に東の方向に体をむけ、朝日を浴びながらやるといいそうです。ちなみにこれも、毎朝手軽に行うために、最初の部分だけを抽出したもの。

1. 両足を揃えて直立し、まっすぐ前を見据えながら手を合わせます。

2. 息を吸いながら、両腕を左右に伸ばし、手のひらを上に向けて、頭の上で両手を合わせます。同時に腰から上(お腹、胸、脇の下、喉元)、膝を伸ばしていきます。目線は両手の先、遠く上空の方を見上げます。

3. 息を吐きながら、手のひらを下向きにして左右に下ろしていきます。息を吐き続けながら、再び腕の前で手を合わせます。

(69ページより)

ただ伸びをするのとくらべ、普段なかなか使わない部分も伸ばせるそうです。しかも、これらを呼吸瞑想とセットでやったとしても、1〜2分もあれば十分。それで心身をシャキッとさせてキビキビと動けるようになれば、瞑想にかけた時間もすぐに取り戻せるというわけです。(66ページより)

ビジネスパーソンのリアルな悩みを解決する手立てとなるように、各項目ともまずは著者をモチーフにした架空のビジネスパーソン「A氏」と、編著者をモチーフにしたマインドフルネスの「先生」との対話からはじまります。

そしてそののち、解説へと移行していくわけです。そのため読みやすく、「ビジネスに活用できるマインドフルネス」を無理なく理解することができるでしょう。

メディアジーン lifehacker
2017年10月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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