「なかなか取りかかれない気持ち」を改善する方法

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時短術大全

『時短術大全』

著者
生産性改善会議
出版社
KADOKAWA
ISBN
9784046020789
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

「なかなか取りかかれない気持ち」を改善する方法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

時間を有効活用することは、ビジネスパーソンの必須条件。とはいえ現実的には、なかなか難しいことでもあります。そこで活用したいのが、きょうご紹介する『時短術大全』(生産性改善会議編、KADOKAWA)。スケジュールの管理術にはじまり商談・会議のテクニック、最新のデジタル活用術や対人関係まで、さまざまな「時短術」が紹介されています。

時短術と聞くと、「本当に役立つのか」といぶかる人もいるかもしれない。たとえば、パソコンのショートカットキーを覚えるのが億劫だからといって、マウスで操作している人がいる。だが、ショートカットを使って1日の仕事が10分でも短縮できれば、単純計算で年間40時間もの削減になる。時短術とはこうした「ちょっとした工夫」の絶え間ない積み重ねなのである。もし自分の仕事が遅いと感じているなら、この機会に、これまで顧みることのなかった「ちょっとした工夫」をやってみてはいかがだろうか。(「はじめに」より)

そんな本書の【第2章】『社会人必須の「時短術」』のなかから、「なかなか取りかかれない気持ちを改善」に目を向けてみましょう。

嫌いな仕事でもまずは手をつけてみる

難しい仕事や面倒な仕事は、ついつい後回しにしてしまいがち。それどころか「やらなければ」と焦ってしまうばかりでストレスがたまっていき、ますますその仕事が嫌いになってしまったりするものでもあります。

しかし嫌いな仕事を進めるためには、「とにかく10分だけ」などと決めて、まずは手をつけてみることが大切。ちなみに最初にするのは、「資料を集める」「フォーマットをつくる」などと細分化した“簡単なこと”がいいとか。

実際にやってみると、すぐに10分が経過してしまい、もう少し続けたくなったりするのだといいます。また、思ったよりはかどったりすることも。そして大切なのは、次の日もまた「10分だけ」とやってみること。それを続けている自分のことをほめてやると、いつの間にか「嫌いだ」「苦手だ」という気持ちが薄れて、やがて完成に近づいていくというわけです。

気乗りしないからといって仕事をほったらかしにしておいたとしても、結局はやらなければなりません。しかも、やりたくないと思っている時間は不愉快なだけ。だからこそ、少しずつでもやることが大切だという考え方です。(68ページより)

時間も手間もかかる大きな仕事は、取りかかる前から気が重いもの。そのため、つい後回しにして楽な仕事を優先させてしまうという方もいらっしゃるのではないでしょうか。でも、それだと結果的に、遅れを生じさせることになりかねません。

そういう大きな仕事は、分割してみると着手しやすくなるといいます。全体をざっと見たとき、細かく分割されたひとつひとつの固まりになっていれば、それらを順番に片づけていけばいいだけだということ。そうすれば、仕上げるまでにそれほど苦労はしないで済むわけです。「とりあえずやってみよう」という気持ちでいいので、とにかくひとつを終えてみる。そうすると、「手に負えないではないか」という心理的なハードルが下がるそうです。

しかも分割する過程で全体の段取りがつかめ、重要なポイントがわかっているため、あとはひとつひとつ根気よく片づけていくだけ。そして最後まで到達したら、あとはまた大きくまとめて完成させればいいだけです。(70ページより)

大きな目標よりもまずは「小さな目標」をこまめに掲げる

「社長になりたい」「海外支社を創設したい」などの大きな目標を持つことは、毎日の仕事の励みになるでしょう。しかし、目標を立てただけで満足し、実現に向かって努力することを忘れていたのでは本末転倒です。

そこで、まずは週単位、月単位などの小さな目標をこまめに掲げ、その集大成の到達点を「大きな目標の実現」にするといいそうです。なお小さな目標は、その時点での自分の実力でがんばれば実現可能なものとし、ひとつひとつクリアしていくことが大切。クリアできなかったとしたら、「なにが原因か」を考え、それを改善すればOK。それでも失敗続きなら、目標全体を見なおせばいいわけです。

小さな目標をクリアしていけば、自分が成長しているのがわかるものです。それだけでなく、大きな目標まで何割くらい進んだかもわかるので、やる気を長く保つことができるのだといいます。(71ページより)

仕事を「こなす仕事」と「創造する仕事」に分解する

自分の仕事を「こなす仕事」と「創造する仕事」の2つに分けると、効率化しやすいのだとか。「こなす仕事」とは、メールや郵便物のチェック、領収書や書類の整理といった作業が中心の仕事。ある程度の時間はかかるものの、あまり考え込む必要はないわけです。一方の「創造する仕事」は、新しい企画を考えるなど、精神を集中させて価値を生み出す仕事のこと。

「こなす仕事」は慣れれば素早くできるようになりますし、スキマ時間を活用するなどして合理的に片付けることがポイント。そして「創造する仕事」のほうは、自分の集中力がベストの状態になる時間をつくって結果に結びつけることが重要。2つのバランスをとることで、要領よく仕事を進められるということです。(71ページより)

「小さな成功体験」で努力の重要性を再確認する

誰にでも、自分の努力が信じられなくなることはあるでしょう。そんなときには、「小さな成功体験」を積み重ねることで、再びモチベーションを高めることができるそうです。小さな成功体験をつくるときのポイントは、短期間で容易に結果が出るものに挑戦すること。決して大げさなものではなく、たとえば「いつもより早い時間に出社して仕事をはじめる」「会議でなにか発言する」といった程度でかまわないといいます。

そのように小さな努力と成果を味わう体験を繰り返すうちに、努力に対する信頼は回復していくもの。それが実現できれば、あとは挑戦することのハードルを少しずつ上げていくだけ。そうすれば、努力は必ず大きな成功に繋がっていくだろうと著者は記しています。(73ページより)

まわりに流されず自分だけの「勝ちパターン」にこだわる

たとえば、人事異動で新しい上司がやってくると聞いただけで、暗い気分になってしまったりーー。自分に自信がないと、すべてにおいて消極的になってしまうものです。でも、自分の勝ちパターンを見つけることができれば、そんな悩みは払拭できるそう。

人間には誰しも、なんらかの成功体験があります。とはいえ成功といっても、華々しいものである必要はなし。誰かに感謝されたとか、友人ができたりしたことなども成功体験だというわけです。そして、そのときの自分が、気軽に人の手助けをしたり、腹を割って話したりしていたのなら、それが勝ちパターン。これは、長所や強みといいかえることも可能。まわりの人と比較するのではなく、自分の勝ちパターンにこだわれば、なにごとにも自信を持って臨めるということです。(74ページより)

「できるかできないか」ではなく「やるかやらないか」

もちろん、仕事をするうえでは、結果を考えて行動することは大切です。しかし、そればかりに気をとられていると、なにひとつ行動に移すことができなくなるかもしれません。でも、どんなことでも、まずやってみないことには未来を予測することは不可能。つまり大切なのは、「できるかできないか」よりも「やるかやらないか」だということです。

そこで、まずは第一歩を踏み出してみることが重要。躊躇して立ち止まっていても、無意味な時間が過ぎていくだけだからです。根拠のない自信にとらわれているくらいなら、根拠のない自信を持って歩みを進めるほうが、ビジネスにおいては有効だということ。(74ページより)

これらのなかには、「どうしてこれが時短術なんだ?」と感じてしまうこともあるかもしれません。しかしその点について著者は、「時短とは単にあらゆる作業を効率化することではない」と主張しています。たとえば前向きな気持ちを持つことも、長い目で見れば大きな効果を生む可能性があります。ひとくちに時短といっても、その内容は多岐にわたるということです。

もしかしたら、本書が300ページ以上のボリュームになっているのも、「時短にはいろいろなケースがあるから」なのかもしれません。いずれにせよ、テーマごとに完結にまとめられているため読みやすさは抜群。自分にとって必要な箇所だけを拾って読めば、それもまた時短になるかもしれません。

メディアジーン lifehacker
2017年10月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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