『夢と幽霊の書』 アンドルー・ラング著

レビュー

10
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

夢と幽霊の書

『夢と幽霊の書』

著者
アンドルー・ラング [著]/ないとうふみこ [訳]/吉田篤弘 [解説]
出版社
作品社
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784861826504
発売日
2017/08/21
価格
2,592円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『夢と幽霊の書』 アンドルー・ラング著

[レビュアー] 土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

 およそ百二十年前、世紀の変わり目の「怪談実話集」の趣である。『アンドルー・ラング世界童話集』で知られる著者だが、スピリチュアリズム(心霊主義)全盛の英国で心霊現象研究協会長を務めたりもして、どうやら不思議と怪異の民話伝説蒐集(しゅうしゅう)やフォークロアへの興味が高じてこの分野へと足を踏み入れたらしい。欧州各地の怪異伝説や、研究協会報に寄せられた会員の体験談や報告を駆使した分析が読ませる。

 夢と予兆、ポルターガイストや幽霊屋敷などなど怪異譚(たん)が次々と紹介されて、禍々(まがまが)しくもなぜかなつかしい。読み心地は『遠野物語』めいて、それもそのはず、解説によると本書は明治日本にも影響を与えている。夏目漱石が作中で触れ(東北大学「漱石文庫」に漱石旧蔵の原書が確かにある)、『遠野物語』誕生の契機を作った水野葉舟が翻訳を試み、柳田國男はラングの著作を手に取って、彼の地のスピリチュアリズムと『遠野物語』の世界はどうやらどこかで通底している……と思えば、幽霊を信じるあなたも信じないあなたもきっと楽しめる一冊です。ないとうふみこ訳。

 作品社、2400円

読売新聞
2017年10月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加