【児童書】『アイスクリームが溶けてしまう前に』

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【児童書】『アイスクリームが溶けてしまう前に』

[レビュアー] 篠原知存(ライター)

 ■怖そうに楽しそうに

 じつは昔、ハロウィーンは、子供がいたずらしてもいい日だった。エープリルフールが嘘をついてもいい日なのと同じ。ところが世界恐慌で大人の世界がメチャクチャになったとき、子供たちのいたずらが本当にひどくなった。

 〈大きな男の子たちは、電信柱をノコギリで切り倒したり、路上の車をひっくり返したりした〉

 〈町の大人たちは怒って、いたずらっ子を銃で撃ったりした〉

 楽しいはずのハロウィーンが戦争みたいになったので、大人たちはやり方を変えた。「いたずらしない子にはお菓子をあげる」というお祭りに…。

 小学校の読み聞かせタイムに持っていって、3年生に一番ウケたのは、この部分。「げーっ」とか「うはは」とか、怖そうに楽しそうに聞いてくれた。

 シンガー・ソングライターの“オザケン”が文章を担当した絵本。ある街のハロウィーンの一日が描かれる。総ルビで小さな子でも楽しく読めて、込められた詩情は大人にも響く。家族で一緒に。(小沢健二と日米恐怖学会著/福音館書店・1400円+税)

 篠原知存

産経新聞
2017年10月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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